バッハ教会カンタータ日本語版楽譜シリーズ

新聞雑誌紹介

 


共同通信配信(2000.5.28   朝日新聞(2000.8.25   こころの友(2003.6   日本経済新聞(2005.12.8

讀賣新聞(2006.4.20   朝日新聞(2006.5.6   朝日新聞(2006.8.18   東京新聞(2007.2.3


 

バッハ日本語版楽譜を刊行  東京バッハ合唱団  カンタータ50

共同通信 配信(2000.5.28

(東京新聞・信濃毎日新聞・神戸新聞・山陽新聞・徳島新聞・宮崎日日新聞、他)

日本で唯一、バッハ作品の日本語上演を続けている東京バッハ合唱団が、ドイツ語歌詞と日本語歌詞を併記した「バッハ・カンタータ50曲選」の刊行を始めた。

同合唱団は1962年の創設以来、主宰者・指揮者の大村恵美子による日本語訳でバッハのカンタータを演奏。学者や批評家、声楽家の意見を参考に、歌詞の改定もたびたび行ってきた。

50曲選」は、その成果を世に問い、日本語による上演を盛んにするのが狙い。バッハのカンタータはこれまで本格的な国内版がなく、楽譜の入手も困難だったことから、ドイツ語で上演する団体からも歓迎されそうだ。

底本には、ドイツのブライトコプフ社から出版されているピアノ伴奏楽譜を使用した。第1回はカンタータ第56番「十字架を勇みて負わん」、同106番「神の時はいとも正し」、同第156番「墓に片足入れ」などを今月20日に刊行。毎年10冊ずつ刊行し、2004年に完結する。価格は10002000円。問い合わせ先は東京バッハ合唱団出版局、電話03-3290-5731

 


 

カンタータ50曲選  5年間かけて出版

朝日新聞2000.8.25夕刊)

日本語でバッハの宗教曲演奏を続けている東京バッハ合唱団が、日本語歌詞付きの楽譜集「バッハ・カンタータ50曲選」の出版を始めた。5月に10曲を出し、今後も年に10曲ずつ5ヵ年かけて出版する計画という。ドイツ・ブライトコプフ社の楽譜に、合唱団を主宰する指揮者の大村恵美子が邦訳した歌詞をつけた。

同合唱団は1962年に設立されたアマチュア。バッハ没後250年に合わせ、活動の集大成と曲の普及を目指し、代表的な50曲の出版を決めた。11000円−2000円。問い合わせは0332905731(同合唱団)。

 


 

日本語でバッハを歌いつづけて  東京バッハ合唱団主宰 大村恵美子さん

こころの友2003.6

「一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした」(使徒言行録24節)

この季節、教会暦はペンテコステ(精霊降臨日)を迎えようとしています。精霊降臨の恵みとは、福音の言葉が、それぞれの故郷の言葉で語られ、聞かれるようになる奇跡でした。

そのすばらしい出来事を、バッハの音楽において実現されたのが、大村恵美子さんでした。大村さんは、フランスでの学びを終えられた1962年より、日本語でバッハを歌うことを目的とした、東京バッハ合唱団を創設して、これまで40年間にわたって訳詞と演奏活動を続けてこられたのです。声楽曲は原語で演奏するものであり、その難解さも高尚さと覚えるような日本において、なぜあえて訳詞なのでしょうか。

「ルターは聖書を母国語に翻訳して身近なものにしました。また教会で祈ったり讃美するとき、自分の言葉でしますね。同様にバッハのカンタータは、ご飯のように内容が濃いものでありながら、たいへん日常的なものです。ヘンデルのような劇場向きの音楽ではなく、高ぶらない無心な歌です。ですから、それぞれの国で母国語で歌われることは、バッハ自身の意図にかなっていると思いますよ」

聖霊の奇跡は一瞬にして起こりましたが、ドイツ語と全く構造の異なる日本語への訳詞は、推敲に推敲を重ねる労苦の連続だったでしょう。

ある声楽家は、大村さんの訳詞についてこう述べています。

「格調高い原詩の趣をそこなわず、カンタータの精神的内実の世界を、平易で自然な歌詞に置き換えた珠玉の名訳の数々である」

聖霊降臨祭のカンタータより、その訳詞の一部を紹介しましょう。

来ませ 聖(きよ)き み霊(たま)

なが み恵みもて

満たしたまえ われらを.

愛に 燃えしめたまえ.

み光に 照らされ

地にあるもの みな

呼びあつめられたり;

われら ほめうた ささげん.

アレルヤ

(カンタータ第59番《われをば愛する者 われに従え》[日本語版楽譜未刊]より)

これら名訳によるバッハ合唱団の演奏会には、いつも多くの聴衆が集まります。そこでは、歌う者も聞く者も、バッハのメッセージを、つまり聖書の福音を、故郷の言葉で理解し共感できる喜びにあふれるのです。

しかし、合唱団が35周年を迎えた頃、大村さん自身や団員の年齢が増し、限界を覚えたそうです。

「これまでの仕事がこのまま残らないのでは後代に引き継げないので、訳詞つき楽譜とCDの自費出版に踏み切りました。経済的には大変ですが、この企画によってかえって団員たちに情熱がよみがえってきたように思えます」

若き日よりひたすら神さまを讃美して生きる人生を求め、一途に歩んできた大村さんは、毎日曜日の礼拝でこそバッハのカンタータが用いられるように、日本の教会が音楽的にも成長してほしいと願っています。

 


 

バッハの日本語演奏に道筋

日本経済新聞2005.12.8夕刊)

  「カンタータ集」は教会音楽の大家であるJ.S.バッハの「根幹をなす作品群」と言われる。だが、日本ではバッハ愛好者が多いにもかかわらず、「ドイツ語の歌詞がわからない」「わかっても立派に響きすぎる」といった理由で頻繁には演奏されない。

  196211月に発足した東京バッハ合唱団を主宰する指揮者、大村恵美子は「カンタータも〈聖 し、この夜〉と同じくらいの感覚で歌われてほしい」と願い、約200曲ある「教会カンタータ」から50曲を選び、日本語版のピアノ伴奏譜を自費出版、2000年から5年がかりで完結させた。1217日に東京・上野の石橋メモリアルホールで記念演奏会を開く。

  「子どものころから親しんだ『世界名歌110曲集』には堀内敬三らが西洋の旋律に素晴らしい日本語詩を付けていた。外国文学にしても優れた日本語訳がなければ、普及はしなかったはず」と、大村はバッハ作品の日本語訳詞に取り組んだ背景を説明する。ドイツの楽譜出版社、ブライトコップフの協力も得て、ドイツ語原詞と並行し、日本語での演奏も可能な譜面に仕上げた。折りに触れ初演、その実況録音のCDも随時発売してきた。

2007年春、合唱団の45周年にはいよいよ、大作「マタイ受難曲」の日本語演奏にも大村訳で挑む。音楽産業のスター主義とは無縁のところで、意義のあるライフワークに取り組む音楽家の典型だ。(卓)

 


 

日本語で聴く バッハ宗教曲

讀賣新聞2006.4.20

40年以上にわたってJ.S.バッハの宗教作品を日本語で演奏している東京バッハ合唱団が、513日午後4時から東京・上野の石橋メモリアルホールで演奏会を開く。主宰者の大村恵美子が手がけた日本語版<バッハ・カンタータ50曲選>の完結を記念し、3曲を取り上げる。

  バッハが信仰したプロテスタントは、一般市民が日常使う言葉による聖書と讃美歌を生活の基本としている。バッハの宗教曲を訳詞で歌う意義はもっと見直されてよい。前回の定期演奏会(昨年1217日、石橋メモリアルホール)で聴いたクリスマスの音楽も、明快な日本語によるコラールが力強い説得力を持ち、音楽を通じて演奏者と聴衆が一体になる喜びを肌で感じた。問い合わせ=0332905731

 


 

日本語でバッハのカンタータ  楽譜完結の記念演奏会

朝日新聞2006.5.6夕刊)

  バッハの宗教音楽を日本語で歌い続ける東京バッハ合唱団が13日、日本語訳詞つきの楽譜「バッハ・カンタータ50曲選」の出版と並行して続けてきたシリーズ演奏会の最終回を開く。

  バッハは宗教的なテーマを劇風に構成した教会カンタータを約200曲残した。62年創立の同合唱団は、代表的な50曲を選び、00年から年10冊のペースで出版、04年に完結させた。各曲500部、計約3000万円の費用は団員の出資や寄付でまかなった。民間や公の助成金も数十件申請したが一つも通らなかった。肌で感じたのは、日本語訳がいかに「偽物」視されているかという現実だった。

  「質の悪い訳詞も目立ち、拒否感は無理もない、と思うこともある」と、主宰する指揮者の大村恵美子はいう。「ただ、讃美歌は母語で歌うのが普通。バッハの宗教曲を日本語で歌うのも違和感を持たず内容に共感してほしいからです」

  演奏会は午後4時開演、東京・上野の石橋メモリアルホールで。カンタータ第180187194番を歌う。3500円。問い合わせは電話0332905731(合唱団)。

 


 

日本語で歌う最高傑作  「母語でこそ作曲家に共感」 東京バッハ合唱団

朝日新聞2006.8.18東京版)

  「母語で歌ってこそ、作曲家の精神に共感することができる」。バッハの声楽曲を日本語で演奏しつづけている東京バッハ合唱団(事務局・世田谷区)が、その最高傑作ともいわれる「マタイ受難曲」の日本語演奏に取り組んでいる。「芸術の鑑賞ではなく、生活の歌としてバッハを口ずさんでもらえたらうれしい」と主宰者で指揮者の大村恵美子さん。来年3月の本公演に向け、合唱に参加する人を募集している。

  合唱団は1962年に発足した。以来、バッハ声楽作品を中心に、大村さんが訳した日本語で歌い続けている。バッハの紹介とカンタータ演奏の草分け的な存在ともいわれる。約200曲あるバッハの教会カンタータから50曲を選んで日本語楽譜を出版、04年に5年がかりで完成させるという大きな仕事を成し遂げた。

  マタイ受難曲は、新約聖書の「マタイによる福音書」に基づいた音楽。合唱や独唱を加えて進行し、演奏時間が約3時間にもなる壮麗な大曲だ。

  合唱団は、82年に日本語のマタイ受難曲を演奏し、「画期的な試み」と高く評価された。今回、合唱団が来年で創立45周年を迎えるのを記念し、100回目の定期演奏会に合わせて4半世紀ぶりに挑戦することになった。再演にあたり、大村さんは訳詞に細かな改訂を加えたという。

  大村さんは「バッハは、当時の宗教的選良の言語であるラテン語ではなく、民衆の言葉であるドイツ語で歌われることを前提に、受難曲をはじめとする多くの宗教音楽を作りました。私たちは、日本で日常的に使われている言葉、すなわち日本語でバッハの精神を実現しようしているのです」と説明する。

  合唱団の団員からは「心からの思いを込めて歌うことができ、感動的だ」「内容を理解しながら歌えるのが、何よりありがたい」といった声が出ている。

  練習は、8月中は毎週土曜日に世田谷区桜新町1丁目の世田谷中央教会で行われている。9月になると、毎週月曜には新宿区下落合3丁目の目白聖公会で、毎週土曜日には世田谷中央教会で行い、冒頭合唱からの新たな練習を始めるという。

  本公演は来年[2007年]321日午後5時から、杉並公会堂(杉並区上荻1丁目)で予定している。

  合唱への参加には経費が必要。経費や使用楽譜などの問い合わせは東京バッハ合唱団(0332905731)へ。

 


 

 日本語でバッハを歌う

 東京新聞2007.2.3 大村健二)

ふだん使っている言語(母語、国語など)と異なる言語の声楽作品を享受する場合、方法は二つあります。一つは原詞のまま歌ったり聴いたりする、もう一つは訳詞による演奏と鑑賞です。どちらを選択するかは、音楽に限らず、異なる文化(言語)圏の接点にある普遍的なテーマに属します。オリジナルの楽譜通りに演奏することをもって「音楽」と称するのだとすれば、訳詞演奏の出る幕はありません。しかし、心のどの深さで歌い、心のどの深さで声を聞くか、ということになると、母語でうたう歌には敵わないのではないでしょうか。

バッハ(1685-1750)の教会カンタータは、今日に200曲ほどが残されています。ブライトコプフ社という、バッハと同時代に創業されたドイツの出版社から、これら全曲の楽譜が出版されていますが、ここにはドイツ語原詞と英語(あるいは、中にはさらにフランス語)の訳詞が並行して付されています。英語圏やフランス語圏では、彼らにとっての母語によってバッハの作品を歌うということが、ごく普通になされているようです。もちろん、訳詞で歌うだけでなく、原詞でも歌うことでしょう。彼らは、バッハの国の人々がバッハを歌うときに知る喜びを、二つながら(意味を母語で共感し、歌詞に密着した音楽の構造を味わい)心の底から実感することとなります。

私の属しているアマチュアの東京バッハ合唱団では、1962年の創立以来、これと同じことを日本語で実践してきました。この体験を、日本語を母語とする多くの方に味わっていただきたいという思いから、バッハ・カンタータの代表作50曲を選び、ブライトコプフ社より底本の提供をうけて、2000年より日本語版楽譜の自費出版を開始、公演ライブ録音からのCD制作も行ってきて、昨年末に全巻が完結したところです。

原語主義の壁の厚いわが国で、バッハの日本語演奏がどれほど普及するか、これからを楽しみにしようと思います。ある音楽大学の生協では、この楽譜に対し「日本語で歌うのはカッコわるい」という反応が多いとのことでした。一方、英国オクスフォードの町の住民は、英語訳詞での演奏を重視して、バッハやフォーレの合唱曲を楽しんでいると聞きました。わが国の芸術移入の底の浅さは、いっこうに改まらないのでしょうか。(「バッハ・カンタータ50曲選」編集者)

 


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