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沖縄市市営室川団地 (集合住宅)

沖縄市役所の東側の斜面地に建つ市営住宅で、建物老朽化に伴い、建替えられた住宅です。

「アマハジ」「南入りの住宅」「ユンタク場」「花ブロック」等の沖縄の伝統的なスタイルを取り込み、「風が抜ける」「屋外と一体的」といった沖縄の集合住宅の規範となる計画をめざしました。

また、斜面地の立地条件をいかし、半地下式の駐車場を設ける、塔状の高層住棟などの工夫により、公園の中に建つ市営住宅のごく、原風景である段々畑の再現した中庭を持つ集合住宅です。


隣接するガー(井戸)の水を引き込み、沖縄の伝統的な水を敬う空間をつくり、また、南部石灰岩の石積みをつくるなど、失われつつある沖縄を体験出来る教育的効果を持たせた。


石灰岩によるベンチ、階段、踏み石

半地下の駐車場は、ドライエリアや光庭を設けるなど、住宅と都市を繋ぐ空間として、慎重にデザインを行った。


屋上は緑化され、沖縄の集落にあった「ユンタク場」(集まっておしゃべりをするような場所)として設え、住民が手を入れることが可能な余地として、植栽を行わない場所も設けた。

左:住戸のポーチには、コンクリートブロックを使用した「ヒンプン」(玄関前の障壁、悪鬼除け)を設け、ベンチを設けることにより住戸と共用空間の繋ぎの空間とした。
右:テラスは「アマハジ」(天端、軒下の居室と共用空間の中間領域)として、大き目に設定し、接地階は裏木戸を設け、伝統的な住居が持つ南入りの住戸をつくった。

住棟と敷地境界の隙間はポケットパークとして、裏をつくらない細かな設計とした。

基本構想段階(左)では、駐車場に囲まれた板状構想住棟が計画されていたが、斜面地を利用した半地下式の駐車場を設け、住棟は3戸あるいは、4戸/棟の搭状の住棟に分節化をすることにより、住棟に囲まれた中庭を設け、その斜面地の広場を、かつてそこにあった原風景である段々畑を再現すると同時に、、沖縄で失われつつある水の空間、自然を敬う心を育む場として、南部石灰岩の石積みによる統的な建築空間をつくりました。



詳細データ

沖縄市室川市営住宅は、21,992.2 ㎡・288戸の規模の住宅団地である。
敷地は市庁舎の東側の斜面地であり、高低差は約20mある。隣接する田畑や斜面には緑が残り、晴れている日には遠く海を望むことができる風光明媚な場所である。
この辺はかつて室川ガーから水を引いた棚田があり、自然環境にも恵まれた場所であった。
実施設計にあたり、沖縄市では監修者を取り入れた設計体制をつくり、室川団地建替えに向けて、新しい団地の理念づくりと団地の設計を併行して行った。
室川団地は平成5年度に沖縄県が策定した「沖縄県公共賃貸住宅建替促進計画」の建替重点団地の指定を受けている。この促進計画では、

① 良好な住宅・住環境の形成
② 高齢者・障害者に住みよい住宅・住環境の形成
③ 豊かな地域社会の形成

以上3つの建替え方針を掲げている。室川団地では、特に③の項目を、沖縄らしさを回復し、風土に根ざした生活空間の創造により実現を図ることを考えている。それは同時に、戦後復旧の下に行われたナショナルスタンダード(本土の設計基準)の導入による住宅づくりからの脱却でもある。
基本設計では、敷地の特性をいかし、様々な新しいアイデアを盛り込み、新たな住宅への第一歩がスタートした。実施設計、建設工事では、これまでにまとめた考えを受け継ぎ、その理念の実現に向け監修を行った。
3 期工事では1・2期工事での成果と課題をもとに、さらに理想に向けた仕組みを試みた。
監修者である(故)内井昭蔵先生の意思を受け継ぎ、沖縄の集合住宅の新たな規範となるべく、様々な工夫が盛り込まれ、独創的なデザインが試みられている。
駐車場では、花ブロックと琉球ガラスによる照明デザインとし、半地下空間をいかした住居から都市にいたる中間のサンクンガーデンとしての空間が実現した。
また、8・9号棟では屋上菜園を採用し、シルバーハウスを合わせて、より、「集まって住む」ことの利点をいかした建築とすることができた。
シルバーハウスは、中庭に面した団欒室を中心に、沖縄が伝統的に持っていた、開放的な住戸による集落の構造、お年寄りを敬い、集落の宝とするような空間構造とすることができた。
1・2期工事部分とあわせて、市役所東側斜面地のエレベータのネットワーク化が図られ、沖縄市民の利便性の向上も貢献した。
ガスボンベ庫においても建物と調和のとれたデザインができた。
建物に挟まれた中庭では、前回工事部分から、室川ガーの流れを受け、室川団地としてのゆるやかな一体感をつくり、室川団地の景観軸として、「起伏都市」「テラスシティ」らしく細かなデザインとなっており、あたかも公園の中に建つ集合住宅のイメージとすることができた。
8号棟東側には、流れの終点のデザインと室川団地のゲートとして、ポケットパークを設け、室川団地の顔をつくった。
水際のデザインは、沖縄に古くからあるガーや拝所のデザインを再生し、石積は多孔質で自然なデザインが実現した。
これらの試みは、沖縄のこれからの集合住宅の規範として掲げた様々な要素の具現化をみたといえる。
<風土と環境>
言うまでもなく沖縄は周囲を海に囲まれ、海運の要所として多くの文化の狭間で生き、多様な文化の先進性を享受し、それを育んできた。「チャンプルー文化」と呼ぶ沖縄独自の文化である。「チャンプルー」とは色々な文化を混在させるという意味に留まらず、多様なものを沖縄の風土に適合させ、秩序を与えることにより、沖縄の文化としてゆるやかなまとまりを持たせてきたのである。
この大洋的な風土が育む文化は一種のリゾート感覚に近く、生活の「ゆとり」から生まれるものが多い。フク木に囲まれたモザイク状のまち、ヒンプンやアマハジ等の中間領域がそれにあたる。
元来、これらの半戸外の空間(中間領域)は、地面との結び付きの深い水平方向のまち・住宅づくりにいかされてきた。
室川団地ではその伝統的な空間構造を縦に積み上げることで都市としての密度を確保し、かつ、その積み方に変化を与えることで立体的なモザイク状の都市をイメージし、新たな沖縄型の集合住宅の実現を試みる。
また、この縦に空間を積み上げる方法は、環境共生の思想とも合致する。建設するスペースを最小限に留め、大地を本来あるべき姿に復元し、空間に新たな秩序を与えることで空間の再生を図り、建築と自然が一体となった環境を創り上げる。
監修者はこれらの考え(イメージ)を計画理念という形で明確に表わし、先導、調整をもって理念の具現化をはかるものである。
<公共事業の透明性>
これからの公共事業ではより高度な透明性が求められる。計画の各段階で常に計画の到達点を明確にして、最終イメージをつくりあげ、全体の把握を通しての再検討と軌道修正が必要になってくる。
監修者はあくまで、調整、先導をするプロフェションであって、第3者性を守り、公益性を第一に考える。

<優れた景観>
調整にあたってはアーキテクトのとしての深い知識や経験に裏付けられた専門性が大切である。敷地内だけで通用する秩序だけでは建築相互の連続性や調和は図りにくく、法制度も集団規制はあっても、数値化し難い景観を問題とする場合には有効な手段とはいえない。
建築のデザインとは従来、「もの」の秩序の学問であり、構造、材料や意匠においても、「もの」の存在に価値観をおき、こだわることが大切とされ、一貫性とかプロポーションのよさが問題とされてきた。しかし、複数の建築による景観においては適用しない。景観形成は複雑な「システム」のデザインと調整であり、法規性や協定などでは、
優れた景観を生み出すには不十分である。
優れた景観は建築と建築の間のデザインであって、これは具体的な材料や色やディテールの相互関係であり、景観にはこれが一番優れているといったような絶対的価値は存在しない。多元的価値の共存を認める社会にあっては、統一とか一元的な原理のもとに景観をつくり出すのではなく、個性をいかしながら如何に調和のある全体性をつくるか
が監修者に与えられる課題である。

<経済性>
文化の回復と言うべき、沖縄文化の再生は経済性に立脚したものでなくてはならない。
そのために、最先端の技術をベースに考えていく必要がある。最先端技術を使用することにより生まれる余剰分で失ったものを再生したり、先端技術と伝統を結び付けることにより失われた術を再生してゆくことが肝要である。経済性に立脚した計画は社会の評価を受け、影響力が高めることになる。もちろん、伝統に根ざした技術も大切であり、
伝統技術の保護、育成にも最大限の努力をはらうべきであり、全体を通してのコストのバランス感覚が重要となる。

<柔軟性>
室川市営団地のような公共性の高い施設はソフトによって柔軟に対応できるような工夫が必要である。社会的変化、経済的変化、技術的変化等の予測はしにくく、将来、住民や市民からどのような要求が生ずるとも限らない。これらの変化を敏感に受け止めることが必要な公共施設設計において、一時点を限定するような計画は好ましくない。こ
のような施設計画ではコンセプトそのものも柔軟にコントロール出来る仕組みを持つべきである。つまり、設計はコンセプトから実施に至るまで、直線的に推移するのではなく、絶えず起こる変化に対応していかなければならない。
従来の建築計画のように定性的、定量的な追及のみでは変化に対応しきれず、今回の監修方式は変化に柔軟に対応できる体制としても有効であると考える。
特に、再生団地では既存の住人の生活を最優先に考え、徐々につくり上げていく手法をとる。これは団地の成熟の度合いをみながら、創造していけるチャンスでもある。
引続き行われる建設工事では、できるだけ多くの個性的な人々の参加を求め、多様な中にも全体には「ゆるやかな秩序」があるような団地づくりを考えたいと思う。

<ハードとソフトの一体性>
将来の生活イメージを示すソフトは住宅政策であるが、ハードは理念を可視化したものが都市空間である。ハードとソフトの調和は生活の質を高める基本である。この認識のもと全体をコーディネートしてゆき、団地のあり方とそのプロセスを大切にする。
また室川団地を一つのまちとして捉え、周辺環境に溶け込み、景観的まとまりが必要であると考える。
沖縄は風土にあった独自の豊かさを享受する時代へと移り変わろうとしている。室川団地は、新しい沖縄型の集合住宅を形成し、集合住宅のあり方を示す先導的な住宅としたいと考えている。

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