バンドばか話


■ バンドばか話 29: < ドラムデビュー >信頼度A

若手演歌歌手の公演のときの話。朝イチの東北新幹線に乗るとドラムのMさんがいない!寝坊で遅刻です。新幹線はそこそこの便数があるので駅の近くの仕事場ならゴメンで済むんですが、この日の仕事場はローカル線、バスと乗り継いでいくかなりの田舎。乗り換えの連絡も悪いから本番にはまず間に合わない。えらいことになりました。

ドラムがいなくちゃ演奏は不可能なのでメンバーの誰かが代わりに叩くしかないけどラッパやサックスは大事なソロがあって手が離せない。結局俺がやるハメになりました。Tbをばかにされたようで気分悪いけど、客観的に考えればそれが最善。とはいえドラムを叩いたこともないのにいきなり本番デビュー、しかも時間がないのでリハもなし!簡単な曲の打ち合わせだけでステージに上がります。客席は満員、1000人ぐらいだったかなー。

普通はプロデビューともなると厳しい先輩に「だいじょぶなのかあ~?」とジロっと睨まれて「だっ、ダイジョブです、頑張ります!」なんて言ったりするもんですがこの日は「ホントに俺でいいの~?知らないよー?」「ダイジョブだ!お前ならできる!他にいないんだ!」なんだか妙なやりとりです。

もうひとつ重大なトラブルもありました。スティックがないんです。楽器はリースだったんだけどスティックは自前だったので本人が持ってるだけ。田舎のことで楽器屋もなく現地調達できません。やっと調達したのは誰かがもらってきた料理のさいばし。実はこれが大変で、まずスティックに比べてぜんぜん軽いので叩いてもテンテンいうだけでまともに音が出ません。それより困るのは結構柔らかい木の箸だったので、叩いてるうちに少しずつ欠けて短くなってくるんですよ。本番中に全部なくなっちゃうんじゃないのか~?

悪い夢を見てるみたいな気分で本番スタート。とりあえずハイハットをチキチキたたき、キメのところでシンバルをジャ~ンなんてやるのが精一杯。自信がないのでだんだん音が小さくなるとPAの人がフェーダーをぐいっと上げて音を大きくしちゃう。でたまにバスドラを強く踏むと「ドッカーン!」と爆音が響いて慌てて絞るというコントみたいな演奏が続きます。冷や汗ダラダラ、喉はカラカラで干物になりそうになってるとステージ半分ぐらいのところで本物のDr奏者Mさん到着。急遽ステージを暗くして選手交代。やれやれ、なんとか死なずにすんだぞ。

ようやく自分の席に戻りますが、ウォーミングアップを全くしてない上にパニック状態でトロンボーンの調子は最悪。さんざんな1日でした。


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