内田光昭 公開秘密基地(なんでやねん)

Jazz & Trombone 猫の巻


■ 猫の巻乃11:本番は練習じゃない

初めてミュージカルオーケストラの仕事をしたときの話。

ミュージカルは1ヶ月単位で劇場に入り、毎日同じ譜面を演奏する仕事です。1回の公演時間はだいたい3時間ぐらい。1ヶ月の中には1日2回公演の日もけっこうあります。お芝居と歌や踊りの組み合わせだから3時間ずっと演奏するわけじゃないけど、緊張は3時間ずっと続きます。だから2回公演の日はほんとに大変。

金管楽器は口がバテて音が出なくなったら終わりです。疲れもだんだん溜まってくるし、毎日長時間演奏してるんだから調子の維持は充分だろうと思い、朝に軽くウォーミングアップをするだけでオケピットに入り、仕事がすんだらみんなで飲みに行くという毎日を過ごしました。

ところが公演が全部終わり、普段の仕事に戻ってびっくり!以前できてたことがさっぱり吹けません。高い音やデカい音、細かいフレーズなどが吹けなくなっている。焦って練習しますが急に調子が戻るはずもありません。元の調子に戻るのに3ヶ月ぐらい、大ピンチの日々を送るハメになりました。

よく考えてみると、ミュージカルは同じ曲を同じ順番で演奏するのでそれ以外の奏法は使わなくなります。普通のステージではどんな譜面がくるか分からないのでいろんなパターンの練習をしてあらゆる事態に備えておくわけですが、それがミュージカルでは必要ないので演奏の柔軟性が失われる。この落差が分かってなかったんですね。

さらに言えば、本番では良い演奏のために全力を尽くすため、技術的にかなり無理な吹き方もしています。これは基礎テクニックの維持という意味ではむしろマイナス要因といえます。かなりキツい仕事のときでも、いやキツい仕事だからこそ、最小限の基礎練習が必要になると思います。

基本が大事」という言葉からは誰も逃げられません。演奏を始める前にはなるべく同じ手順で基礎練習を、少しでも良いからやるようにしましょう。コンディションの維持に効果抜群です。

 

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