ひき逃げ遺族の会                   

















ひき逃げは、飲酒運転などとセットで話題になって  いるように思えます。しかし、ごく普通の事故であっ  ても、運転者に良識が無ければ、ひき逃げに至るこ  とがあります。ひき逃げ遺族の会は、あらゆるひき  逃げの悪質さを社会に訴えることで、この地球上か  ら、すべてのひき逃げを無くしていきたいと考えています





「故意犯」と「過失犯」の違い

例えば、強盗・殺人などの凶悪犯は、犯行後、すべての犯人は逃げようと考えます。人を殺そうとか、人の物を強奪しようとして起こした犯罪ですから、逃げるのは当たり前です。このように刑法では、一般犯罪者が「逃げた」としても、逃げたこと自体を罪とはしません。

では同じような刑事犯罪でありながら、交通事故についてはなぜ「ひき逃げ」という行為が罪になるのでしょうか。すなわち交通事故は、起こそう、として起こした犯罪「故意罪」ではなく、気がついたら起きてしまった犯罪、すなわち「過失罪」だからです。

過失罪は、不注意の結果ですから、その罪は故意罪に比べて軽く設定されています。交通事故で人をはね殺したとしても、軽い処罰で済むのは、こうした理由があります。


交通事犯は、逃げないのが当たり前

交通事故は町中で起きるとは限りません。山の中など人気の少ない所で起きることもありますし、高速道路上など一般市民が関与できない特殊な場所もあります。

そのため交通事故の当事者には、被害者を救護する義務と、事故を起こしてしまったことを警察に報告する義務を負うことを求められています。その目的は、被害者を早期に救護することにより、怪我の程度を軽く押さえようとすること、そして、素早く円滑な道路運行を回復するためとされています。

わざわざ法律に定めるまでもなく、これらの責務は、人間として当然の行為のように思えます。しかし、あえて義務化した背景には、義務を厳格に遂行させるため、交通事犯の微罪と引き替えにされているとも言えます。


なぜ加害者は逃げるのか

交通事故は、起こそうと思って起こすのではないと前述しました。しかし交通事故には、少なからぬ不注意が背景にあって起こります。

道路交通法には、運転者が守らなければならない様々な責務が謳われています。逆から見れば、交通事故は、道交法で定められた責務を果たさなかった結果、引き起こされたものとも言えます。

事故を起こした当事者は、事故後、まず自分が怠った安全運転責務を思い浮かべます。そしてその責務を咎(とが)められることを考え、怯えてしまうのでしょう。中には、パニックに陥って、反射的に逃げ出す加害者もいるかも知れません。

それでも加害者は、冷静に立ち返り、冷静に考えて義務を果たさなければなりません。パニックを言い訳にすることは許されないのです。


悪質なひき逃げの増加

近年、耳目を疑うような、むごいひき逃げ事件が増えています。多数の死傷者が出て、かつ自分の車が大破していても逃走したケースや、被害者を車体の下に巻き込んだまま、長距離を引きずって逃げ、被害者を死亡させた事件などがマスコミを通じて報じられています。

こうした悪質なひき逃げの裏には、悪質運転加害者に対する処罰が重くなったからだと、考えられています。


加害者に対する厳罰化

飲酒運転の挙句、重大事故に至った事件が頻発した時期がありました。しかし飲酒運転も一般の事故と区別されることなく、従前通り軽い処罰が繰り返されました。

これに怒った遺族たちの抗議がきっかけとなり、「危険運転致死傷罪」が制定されました。さらに一般事故でも処罰が軽すぎるという世論に押され、「自動車運転過失致死傷罪」も出来ました。

それに伴い、道路交通法も再三に亘って改正され、交通事故に厳しい世論を反映するような法体系に変わりました。


厳罰化の効果

交通事犯に対して厳罰が科されるようになったことで、とくに飲酒運転は激減しました。酒の提供者や飲酒運転車に同乗した者にも重罰が及ぶようになって、飲酒運転を撲滅しようとする気運が社会に満ちました。

しかし、それでも全ての飲酒運転を無くすには至っていません。時が経つに従って、飲酒運転する者が再び増え始めているのです。危険運転致死傷罪に含まれる、覚せい剤など薬物使用や、重過労運転などでも、同様の「慣れ」が目立ってきています。


逃げ得の増加

一方加害者の側から見ると、処罰の重さから逃れようとする自分勝手な発想が生まれます。本来、加害者が逃げることを前提にしていない交通事故では、それでも逃げる者に対して厳しい処罰を準備していなければなりまん。

しかし現実には、逃げた方が処罰が軽くなるといった「逃げ得」があります。逃げ得には、救護義務違反の処罪が軽すぎること、さらに危険運転致死傷罪は、悪質行為が立証できた場合にのみ適用されるという、制度上の問題があるからです。


加害者の責務

では、ひき逃げの問題は、飲酒運転など悪質運転だけについてあるのでしょうか。残念ながらひき逃げは悪質運転だけでなく、ごく普通の事故でも起こり得ます。これはまさに救護・報告義務逃れの、もっとも卑怯な行為です。

飲酒や薬物などの影響もなく、冷静な判断ができる状態であり、それでもなおかつ逃走するこということは、もっとも身勝手な行動に他なりません。酒や薬物で意識が混濁している者よりも、むしろ悪質だとも言えると思います。
悪質運転がらみのひき逃げだけが注視される現状に、私たちは大いなる
疑問と憤りを感じます。


現場離脱行為にこそ目を向ける

前述のように、救護・報告義務は、自動車を運転する者に課された必要最低限の義務です。加害者が適切な義務を果たしさえすれば、被害者の怪我は軽くて済むかも知れません。

そして何より、命を落とさなくて済んだかも知れないのです。さらに加害者が判明しないため、被害者や遺族は、怒りの持っていき場が無いことで苦しめられます。被害者や遺族への経済的救済にも、著しい不利益が生じます。

ひき逃げには、どんな理由も言い訳も通用しません。すべての事故において、加害者が現場を無断で離脱する行為を糾弾し、反省を求めたいと思います。


   
  


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