ひき逃げ遺族の会                   




















私の考える「ひき逃げ」とは

ひき逃げ遺族の会代表 大野隆義


                                                              写真はイメージです

私は「ひき逃げ」という違法行為について考えたとき、「飲酒および薬物を服用しての事案」と、「酒や薬物を用いない、いわゆる“白面(しらふ)”状態での事案」との間に、法的処罰に差別があってはならないと思っています。

飲酒や薬物服用の事案では、「逃げ得」と言われる「厳罰逃れ」の動機ばかりがクローズアップされています。もちろん飲酒・薬物服用での運転は、万人が認める悪質な行為です。
加えて事故現場から逃げることは、危険運転致死傷罪の適用を避けようとする、明確な意図が隠されています。すなわち証拠隠滅のため逃げるのは、もっとも卑劣な行為であると周知されているのです。

それでは、「白面」の運転者が人を轢いたうえ、明らかに自己保身のため、その場からに逃げ去った場合はどうでしょう。前述の「飲酒・薬物服用」と比較して、道徳的に非難されるべき差が、両者の間に存在するかと考えたとき、それを容認出来ない体験が私にはあります。

2002年、当時小学5年生(10才)だった私の娘は、朝の登校途中、それほど大きくない交差点で大型ダンプに轢かれ、即死しました。
青信号の横断歩道を渡っていたとき左折してきた、いわゆる「デコトラ」の10トンダンプにバンパーでなぎ倒され、さらに左側前後輪が、娘の体を分厚いランドセルごと乗り上げ、そして停車することなく逃げ去ったのです。

娘をバンパーで倒した瞬間から、運転手は逃げることを優先し、ブレーキペダルを踏むこともせず、さらにアクセルを踏み込んで、何の躊躇もなく走り去ったのです。そして人を轢いたことに気付かなかったかのように見せかけるため、その道路の法定速度である40km/時で走行するという、きわめて冷静な判断をしての悪行です。

犯人は飲酒や薬物の服用のない、要するに「白面」であったからこそ、自分の利益に直結する方法を瞬時に判断し、実行出来たと考えられます。
今、飲酒・薬物によるひき逃げ事件において、「逃げ得」を許さない社会的風潮が高まっています。このことは私たちひき逃げ被害者遺族のにとって大きな前進であり、大いに歓迎しています。

しかしながら、飲酒や薬物服用事案に限定される「ひき逃げ」だけが注目されようものなら、それ以外の一般的「ひき逃げ」が後を絶たないどころか、かえって増加するのではないかと懸念します。

特に、マスコミに取り上げられる機会が少ない「白面」ひき逃げのケースも、「飲酒・薬物服用」と同様、許し難い悪質行為であることを、社会全体で認識しなければならないと考えます。

行政には、すべての「ひき逃げ」行為に対して、差別のない、適正な法の処罰をお願いしたい。そして歩行者など、交通弱者に優しい車社会を実現して欲しい。それが我々の主張であり、我々の運動方針です。



  
  



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