自転車事故の裁判例と裁判上の和解・示談

  1. はじめに:自転車事故判例における要注意点
  2. 自転車対歩行者の事故の高額賠償裁判例
  3. 高校生による自転車事故の高額賠償例
  4. 自転車同士の事故の高額賠償裁判例
  5. 中学生加害者の親の指導・監督責任を認めた判例
  6. 自転車同士の事故:被害者の過失の主張・立証に失敗した例
  7. 裁判上の和解・示談:裁判上・裁判外の和解書・示談書例
  8. 弁護士費用の請求は難しい
  9. 自転車事故:回避動作の向上

はじめに:自転車事故判例における要注意点

自転車事故の判例については、
単なる事故態様・過失割合だけでなく、必ず個別の判例における下記の項目等確認しておきましょう。

  1. 認定された各過失要素
  2. それに対する過失判断
  3. 事故状況および条件

また、相手方保険会社・弁護士などから過失割合を提示された場合には、
必ずその根拠を書面で交付するよう求めましょう。
もし、類似判例の過失割合と事故態様(発生状況図等)しか示されなかった場合には、特に注意が必要です。

参考:過失割合の基本算定と判例の過失割合の変更

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参考:過失割合の基本算定と判例の過失割合の変更

自転車事故による高額な損害賠償事例の増加により10%過失が修正されるだけでも大きな影響が出ますので、一般的・基本的な過失算定手順を知っておきましょう。

  1. 事故態様から以下のような相殺率認定基準をを用いて「基本過失割合」を決定する。
    1. 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ)
    2. 交通事故損害額算定基準(青い本)
    3. 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)
  2. 当事者の過失要素による修正をする(ここまでが基本算定)。
    なお、過失修正要素には速度違反や徐行義務違反などの「個別的修正要素」と、著しい過失や重過失といった「一般的修正要素」がありますが、難しく考えずに「道路交通法等法令に違反する行為」や「事故の危険・原因につながる故意・不注意」などと考えておきましょう。
  3. 事故発生状況による個別の過失修正

※ 事故類型別の過失相殺基準に対する注意点

過失割合について判例を利用する場合は、その判決の「過失判断・事実認定」を明確にしなければなりません。
切り取られた一場面が同様であっても他の条件が異なればほとんど意味がありません。

※ 自転車同士の事故

軽車両同士ということで基本的には四輪車対四輪車の過失割合の算定基準を準用します。
しかし、四輪車対四輪車の過失割合の算定基準を用いるのが明らかに間違いの場合もありますので注意が必要です。
例えば十字路・T字路・丁字路などの交差点における自転車同士の出会い頭の事故の場合がそうです。

自転車事故:過失割合算定のための基本マニュアル

● 判例の過失割合の変更

これは可能です。その理由として下記のようなことが挙げられます。

  1. 裁判においては、裁判官が認定した事実に基づいて判決がなされること。
  2. 裁判官の思考方法として、基本的にまず動かし難い事実を決めてから経験則で仮説を立て、証拠で裏付けるという方法(経験則に反する場合はその主張立証が必要)を取っていること。
    主張立証・突っ込み方・説明等が上手くいかず、挙証責任のある原告が不利益を被っている事例が多々あります。
  3. 裁判所は、当事者の主張していないことを判決の基礎にできないということ。
    過去の判例において過失認定の際に考慮されていないものがあるということです。

上記を踏まえて事故発生状況・事実関係等を整理しておけば、示談段階で相手方・保険会社等が提示する過失割合の綻びをつくことができます。
過失の定義等は判例等によって確立していますので、個別の事件・事故においては下記のことが重要になります。

  1. 事件・事故発生状況を的確に把握し、客観的・主観的・状況等の証拠、実情、経験則等、明確な根拠を基に事実関係を整理する。
  2. 過失要素を細分化して過失の程度の差を明確にする。
  3. 第三者にも分かり易く、事故発生状況に即した効果的な表現を用いる。

注意点としては、事故態様によって着目すべきポイントが変化することです。

自転車事故で揉めてしまって裁判所のご厄介になった場合には、被害者が加害者の不法行為責任について主張・立証しなければなりません。
その際には相手方の過失を完璧に立証する必要はありません。
裁判長に「なるほど、確かにそうかもしれないな。」といった心証を持ってもらえれば、相手方の過失を認めてもらえる可能性があります。

● 自由心証主義

民事訴訟法第247条:
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

稀に、被害者や加害者が相手方保険会社・弁護士から提示された過失割合に対して異議申立をした際に、
相手方保険会社・弁護士:「あなたがそれを事実だと主張するのなら、『合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証』か『合理的な疑いを超える証明』が必要ですよ。」
などと言ってくる者がいますが、民事訴訟の場合の必要な証明の程度は、下記のように刑事訴訟よりも緩やかな基準になっています。

● 昭和50年10月24日最高裁判決「必要な証明の程度」

訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。

最悪の場合を想定して早い段階から訴訟にも対応できるようにしておくべきです。
相手があまりに不誠実で平気で嘘を吐く輩の場合には、それが誰であろうと徹底抗戦する覚悟を持たなければなりません。
自身のみならず、大切な家族のためにもです。

さて、著しい過失や重過失といった一般的過失修正要素は通常予定されているものですから、それを考慮して過失相殺を行うのは当然のことです。
過失の加算要素を相手方や第三者に説明等する際は、しっかりとした根拠を示す方がより効果的です。
そのため、自転車事故の過失要素を事故発生状況・現場等から細分化して個別に検討・調整を繰り返し、さらにランク分けを行って適正な過失修正表等を作成することをおススメします。
相手方の過失が明確となる他、あなた自身の過失に気付くこともできるでしょう。
なお、自身に過失がある場合には「認めるべきところは認め、誠意をもって謝る」ことが大切です。

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自転車対歩行者の事故の高額賠償裁判例

● 平成25年7月4日神戸地裁判決

小学五年生の子供がマウンテンバイクで坂道を時速20~30キロで爆走し、散歩中の女性女性(67歳)に正面衝突して跳ね飛ばした事例。

女性は頭の骨を折るなどして病院に搬送されたが意識不明の状態に陥り、その家族と保険会社が子供の母親を相手に損害賠償請求訴訟を提起。

母親に9,520万円の賠償命令。

裁判所は「坂道を高速で下っていたことと、その状態での前方不注視」を問題視して「自転車運転に関する十分な指導や注意をしていなかった」として母親の「指導や注意をしていた」という主張を退けて監督義務責任を認めたものです。

● 平成19年7月10日大阪地裁判決

男子中学生(15歳)が無灯火で幅2.5mの歩道上を車道寄りではなく車道から1.8mの建物側を走行中、交差点の信号機が青のうちに早く渡ろうと速度を上げたところ、男性会社員(62才)に正面衝突して転倒させ死亡させた事例。
男性会社員の過失は0。

日没後ではあったが街灯等で現場はやや明るい状態だったため、男子中学生は無灯火でした。
また、男子中学生は視力0.2程度の視力(裸眼)で普段は眼鏡をかけていましたが、事故当時はかけていませんでした。
親権者の監督責任も問われたが、男子中学生が普段から危険な運転をしていた等の事故歴がなく、親の責任は認められませんでした。
被害者が保険に加入していたため、保険金3,000万円を支払った損保会社が男子中学生に求償して訴訟を提起したものです。

取扱案件において中学生の親の責任を認めさせた実例があります。
住宅街から歩道に進出した男性が歩道走行中の視力0.1程度(裸眼)の女子中学生(14歳)とぶつかって左腕橈骨骨折をした事例で、その親が本判例を持ち出して責任逃れをしました。
しかし、被害男性が中学生の自転車運転の過失を親の責任だと「ある点を明確にして」異議を申し立て、親と徹底的に争い、調停において調停員の説得で親がその責任を認めて和解に至りました。
ご本人による示談交渉によって中学生・高校生の親が子の低視力で責任を認めた例が他に二件あります。

中学生・高校生等の加害者の低視力による損害賠償請求実例におけるサンプル文例

● 平成18年7月10日東京地裁判決

狭い私道からバスに乗るためにバス停のある広い道路の歩道に小走りで進出した際、自転車を運転する女性と衝突して右大腿骨頸部を骨折した事例。

損害として、約374万円を認容。

「小走りで進出」という表現が微妙ですが、とりあえず「飛び出したとまでは言えない状況である」ということだと思っておくとよいでしょう。
この場合には過失割合に影響が出ますので、歩行者としては明確に事実を主張すべきこととなります。

● 平成17年11月25日横浜地裁判決

54歳の看護師女性が市道を歩行中、無灯火の上、携帯電話を操作していた16歳女子高生に追突され、被害者女性は手足に痺れが残って歩行困難になり職も失った事例。

裁判所は、加害者女性(判決時19歳)に約5,000万円の支払いを命じました。
なお、ここでも加害者の父親の責任は否定されました。

● 平成17年3月22日大阪地裁判決

53歳女性が同僚に声を掛けられてビル敷地の植込みの間から歩道上に出た際に、業務中の男性の自転車と衝突して転倒し、腰椎を骨折、後遺障害併合10級及び腰部脊柱変形の障害を残した事例。

損害として、約808万円を認容。

被害者の女性は、植込みの間から出る際に左右の安全確認をしなかったものとされましたが、特に走ることもなく、公開空地という歩道上で衝突したため、歩行者に過失相殺を認めず、自転車が100%悪いと判断されました。
なお、ここで問題となっている植込みは高さが低く、自転車側に前方不注視がなければ歩行者に気付かないといったことはないとされたための過失判断です。

この判例をもう少しだけ突っ込んで見てみることとしましょう。

この判例では、歩行者に多少の左右安全確認義務違反があっても通常の歩行をしていたのであれば過失なしとすべき、
と判断された訳ですが、
これはつまり、「歩行者が通常の歩行でなかったならば過失なしと安易に判断すべきでない」、ということが暗に示されていることになります。

なお、この事故では自転車側から歩行者の確認がしづらいとは言えない状況であったこともポイントです。
すなわち、植込みの高さによっては過失判断が変わることになると言える訳です。

この点、もし歩行者が自転車から視認しづらい状況であった場合には、歩行者もしっかりと左右を確認すべきことや自転車等に自らの存在を気付かせるための行動等が求められることとなります。
こういった状況において、歩行者に10~20%の過失を認定した判例も結構ありますので、歩行者も必要な確認をしっかり行うよう心がけましょう。

他に、歩行者が自転車側から確認しづらい場所から小走りで進出した場合に、
20%の過失が認められた下記の東京地裁平成18年判決があります。
つまり、通常の歩行ではなかった場合、という訳です。

● 平成15年9月30日東京地裁判決

男性が自転車でペットボトル片手に坂道をスピードを落とさずに下って交差点に進入、横断歩道を横断中の買い物帰りの主婦(38才)に衝突して転倒させた事例。
主婦は三日後に脳挫傷により死亡した。

訴訟において加害者側が「歩行者を避けようとしたスペースに主婦が引き返したことから歩行者にも過失がある。」などと加害者の危険行為を棚上げした主張を展開しましたが、裁判所は、「横断歩道を歩行中の歩行者は絶対的に近い保護がされるべき」とし、「主婦が両手に買い物袋を持っていて咄嗟に衝突を回避しづらい事情があったとしても、過失相殺すべき要素はなく歩行者に落ち度はない。」として加害者の過失100%と認定し約6,700万円の賠償を命じました。

● 平成15年2月20日大阪地裁判決

会社員男性の運転する自転車が交差点を横断後に歩道上の人混みに高速度で突っ込み、美容室経営兼主婦(61歳)に衝突して転倒させた事例。
女性は右大腿骨頸部内側を骨折し、後遺障害等級8級7号。

危険性の高い走行とされ無謀運転の自転車運転者の過失は100%。
損害として、約2,108万円を認容しました。
また、会社員が取引先に書類を届ける途中に起こした事故であったので、雇い主である会社の使用者責任が認められて賠償責任を負いました。

従業員が自転車を使用する会社にも、それなりの対策や従業員の自転車運転教育が必要なのでは、と思わせる事例です。

● 平成14年9月27日名古屋地裁判決

白線内を歩行中の老女が電柱を避けて車道に出た際、無灯火で対向進行してきた14歳中学生の自転車と衝突したケースで、老女が頭部外傷による後遺障害2級の障害を残した事例。

老女は、中学生の両親の監督責任を追及しましたが、裁判所は加害中学生の責任を肯定するも、中学生に事故歴などなく普段も問題行動などなかったことなどから両親の監督責任を否定しました。
この判決で老女の過失割合15%と既往症の減額20%が適用されましたが、中学生の損害賠償金は合計 約3,120万円になりました。

● 平成10年10月16日大阪地裁判決

68歳老女が歩道上で信号待ちをしていたところ、17歳未成年の自転車が前方不注視で衝突し、老女が転倒して大腿骨を骨折、後遺障害8級の障害を残した事例。

老女の損害として、約1,800万円を認容。
このうち、逸失利益は就労可能年数を約7年として中間利息を控除、約700万円。

なお、裁判所は未成年者の両親の責任を否定しました。

● 平8年10月22日大阪地裁判決

午後7時頃、18段変速のマウンテンバイクを運転する未成年者が、河川敷の幅員3mの自転車・歩行者専用道路を時速20~25kmで走行中にギア操作のため右ハンドルを注視したまま13.6mも進行し、対向進行してきた女子短期大学非常勤講師の男性(71歳)にブレーキを掛ける間もなく衝突し、転倒させた事例。

男性は急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折等により後遺障害1級。
正面衝突ではあったが、マウンテンバイクにライトがない上、歩行者も歩く道路で前方不注視が過ぎたため、未成年者の過失は85%とされました。
対向している以上歩行者にも回避義務はあったが、年齢等も考慮され、また本件のような河川敷の自転車・歩行者専用道路は自転車のサイクリング用として利用されているという実情があったために、調整がなされて15%の過失に落ち着きました。

損害として、約2,600万円を認容、既払額と合わせて約4,080万円。

なお、未成年者の父親が事故後に被害者との間で損害賠償債務につき連帯保証する旨の合意書を交わしていたため、親にも損害賠償義務が認められました。

自転車事故の損害賠償額が高額なものとなる以上、10%の過失の加算・減算で大変な負担の増減が生じることが分かるでしょう。
自転車事故の適正な過失割合の算定は損害賠償において重要なポイントとなっています。

参考:自転車事故の過失割合相手方、加害者・被害者・弁護士の嘘への対処法

あなたが望んでいなくても、相手の対応によっては裁判も必要となるかもしれません。
そのようなリスクがある以上、最悪の場合を想定して自転車事故の損害賠償請求訴訟・裁判で主張・立証すべき要件事実や具体的内容・方法等についても確認しておきましょう。

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高校生による自転車事故の高額賠償例

高校生による自転車事故が増加し、それに伴う高額賠償事例も増えてきています。

以下に事例を簡単に列挙しておきますので、
「自転車事故でもこんなに高額の賠償金を払うことになるんだ。気をつけなくちゃ。」
と、しっかりと認識しておいて下さい。

  1. 通学中、歩行者に衝突。被害者には、脊髄損傷による麻痺の後遺障害が残り、賠償金額6,008万円
  2. 帰宅途中、街灯のない道で歩行者に衝突し死亡させた。賠償金額3,912万円
  3. 道路右側を走行中、対向進行してきた主婦の自転車と接触して転倒させ、死亡させた。賠償金額2,650万円
  4. 帰宅途中、無灯火で歩行者に気付かず衝突、死亡させた。賠償金額1,169万円
  5. 帰宅途中、植木の剪定をしていた作業者の脚立に接触、転倒させ、死亡させた。賠償金額685万円

まだまだありますが割愛します。
ここでは、自転車だからと軽く考えないようにすることを肝に銘じておいて下さい。

参考:自転車対歩行者の事故

自転車事故の高額賠償裁判例から、もし過失割合が10%でも変われば、数十~数百万の差が生じることがご理解いただけると思います。
相手方保険会社や弁護士があなたの事故態様と類似した判例を根拠に過失割合を提示してきても、それが絶対ではありません。
最近の損害保険会社は、仮に訴訟になった場合にあなたの主張通りの判決が出る可能性がある異議に対しては、かなり譲歩する場合が増えています。
あなたが事故発生状況から的確な異議を行うことが、適正な過失割合での早期解決に繋がるのです。

NEXT:自転車同士の事故の高額賠償裁判例

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自転車同士の事故の高額賠償裁判例

● 平成14年6月11日大阪地裁判決

二人乗りの自転車が坂道を下って高速度で三叉路に進入、対向進行してきた自転車の男性(69才)と正面衝突した事例。
男性は急性硬膜下血腫等の脳の傷害により病院で緊急手術を受けたが植物状態となり、一年四カ月後に気管支炎から肺炎を併発し死亡し、事故と死に相当因果関係があるかが争点となった。
チューブ挿入を余儀なくされたために感染症による気管支炎を発症し易くなったこと等から因果関係が認められました。

損害として、約3,730万円を認容。
このうち、逸失利益は平均余命を約13年として厚生年金収入約1,070万円。

● 平成14年2月15日さいたま地裁判決

男子高校生が自転車で歩道から交差点に無理に進入。保険勧誘員の女性(60才)が運転する自転車と衝突して転倒させた事例。
女性は頭蓋骨骨折で病院に搬送されたが九日後に死亡しました。

約3,140万円の支払い命令。

● 平成7年3月17日東京地裁判決

信号のない見通しの悪い交差点での出会い頭の事故で、今回は加害者となった女性が、今回は被害者となった男性工員(61歳)の右側面に衝突して転倒させた事例。
ただ、双方に交差点での安全確認義務の過失を認定し過失割合は50:50。

男性は左大腿骨骨折による人工骨置換によって足が2センチ短縮したため、後遺障害8級7号。
損害額として約1,007万円を認容。

過失が半々なのに痛み分けどころか一千万越えの「借金」を背負うこととなった事例です。

事例は暇があれば徐々に増やしていく予定です。

以下は、知っておくと役に立つこともあるかもしれない判例です。

● 平成19年3月5日東京地裁判決

赤信号により双方が一度停止し、青信号になってから被害者男性(タクシー運転手)が横断して加害者男性の横をすれ違おうとしたところ、加害者がよろけたためにX地点で接触し、被害者が信号機の鉄柱に顔をぶつけたという「交差点付近の歩道上での自転車同士のすれ違い様の接触事故」の事例。
なお、双方とも他に特に問題となる過失はありませんでした。

被害者の傷害:頭部外傷、顔面挫傷、左手背部擦過創等。
過失割合は、被害者:加害者=40:60。
被害者の過失として考慮されたのは、加害者の横を通る際にもう少し注意すべきだったということと、サイズ不一致・体格不適合の自転車運転の不安定性。
損害額として、約6万円を認容、既払額と合わせて約70万円。

サイズ不一致・体格不適合・サドルが高く足が届かない等

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中学生加害者の親の指導・監督責任を認めた判例

● 平成16年京都地裁判決

親の監督義務懈怠を認め、約269万円の支払を加害者の親に命じました事例。
午後11時10分頃に発生した自転車対歩行者の事故で、加害者は当時中学生(14歳)。
この時、加害者は無灯火でライトが故障していました。

この裁判で裁判所は次の二点を認定しました。

  1. ライトが故障した自転車に乗っている子供を放置し、これが事故の一因となっていること
  2. 深夜この自転車に乗って行動することを放置していたこと

以上の状況から、
裁判所:「親としての監督義務を怠っていたものと言える。そして、事故が発生した。親の義務違反は民法709条の不法行為責任に当たる。だから賠償しなさい。」
といった訳です。

親の責任を認めさせるためには「親の責任といえる要素」をしっかりと押さえておく必要があります。
そのためには、まず自転車事故の過失要素をしっかりと確認しておかなければなりません。
参考:自転車事故の過失とその修正値

事故当事者の「目に見える過失から見えない過失」まで、どういった過失要素があるのかを確認し、「親の責任を問えるもの」をピックアップして整理しておきましょう。

また、「加害者の親の発言」も重要なポイントになります。
下でその判例を確認しておきましょう。

● 平成19年東京地裁判決

午後6時40分頃に発生した自転車同士の事故で、加害者は当時中学生(13歳)。
同一方向に先行していたお婆さんの右折中に、加害者が高速度でぶつかった事例です。

本件の高速度は、現場検証による位置関係から割り出され、加えてノーブレーキであったことから問題となりました。
呆れたことに、高速度に加えて無灯火でした。

しかも、ライトは故障ではありません。
加害者本人が点けてなかっただけです。
この点が、ライトの故障を放置していた親というポイントを挙げた上記の平成16年京都地裁判決とは異なります。

本判例の注目ポイントは、加害者の親の責任を「親の発言」と「事故後の加害者の対応」から追及したことです。

  1. 親の発言:「またスピードを出していたのか。」
  2. 事故後の加害者の対応:被害者に対する配慮不足等

1.については、正に口は災いの元となった訳です。
裁判所:「子供に普段から行動に問題があったことを親が知っていたんだな。それで事故が起きたんなら、親の注意が不十分だったんだろう。」
と判断した訳です。

2.については、被害者の救護義務等が問題となったのです。
裁判所:「加害者は、被害者の救護義務等がよろしくなかった。だから親がちゃんと基本ルールを教えていなかったんだろう。責任あるんじゃないの。」
と、結構強引に親の責任に結び付けました。

上記の親の一言がなければ、
「一体どうなっていたのか? 配慮不足等は問われなかったんじゃないか?」
などと思ってしまいますが、いずれにせよ判例等から親の責任を問うためのポイントを見つけるようにすることが大切なのです。

親の指導・監督責任を問うための具体的なポイントをどうやって書面に落とし込むかに関しては、確認事項と流れを押さえておく方がよいでしょう。
未成年加害者に対する損害賠償でお困りの方はご相談ください。

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被害者の過失の主張・立証に失敗した例

● 平成20年2月29日名古屋地裁判決 自転車同士の衝突事故

交差点では左方車だった加害者が交差点を右折をして逆走状態となった直後、交差点に差し掛かる以前の被害者に気付いて回避行為を取るも運転操作を誤って被害者に衝突し、転倒させて傷害を負わせた事例です。

被害者は日傘を差して片手運転をし、かつサドルに座った場合に両足がつま先立ちでようやく地面に着くという体格不適合・サイズ不一致の自転車に乗っていました。

訴訟において、加害者側は「被害者の交差点進入時の減速義務違反・前方不注視、傘差しによる回避行為の難、体格不適合による転倒時の被害の拡大等」を主張しました。

裁判所は、被害者の傘差しについて『運転操作に支障を生ずる可能性が高い運転方法』で、体格に適合しない自転車に乗っていることについて『年齢等の属性に鑑みると、安全上の問題があったものと評しうる』としていました。
しかし、結果は「加害者:被害者=100:0」です。

裁判所:「原告の損害が発生するうえで、上記の各点が何らかの寄与をしたものとまで認められない。」
として、加害者の主張を退けたのです。

ちなみに裁判所は、上記の通りの事故発生状況ゆえ本件を交差点での出会い頭の事故ではないとしていました。

この資料を確認しましたが、被害者の損害が発生する上で、被害者の過失要素が明らかに事故発生と損害の拡大に寄与していました。

そうであるのになぜ、このような判決が出たのでしょうか?

実は、加害者は単に被害者の法令違反等を並べて、上記の通りそれが危険な状態ゆえ被害が拡大したのだと主張しただけで、それがどのように被害拡大に寄与したかを明確に指摘・説明していなかったのです。
この結果は「被害者の過失要素が結果にどのような影響を与えたか・どのように作用したか」についての加害者側の指摘・主張・立証が薄かったために出された判例であると言えます。

迷惑な話ですが、同様の事例において、明白な法令違反を行っていた者の保険会社や弁護士がこの判例を持ち出した挙句、過失を認めないという事態が起きていますので、事故発生状況等に関して必要な確認等怠ることなくしっかりと戦略を練り上げるよう注意しましょう。

相手方の法令違反等の過失要素から義務違反を並べるだけでは、裁判長から「立証が薄い」と言われてしまいます。
そのため、過失要素が損害結果にどのような影響を与えたか・どのように作用したかを根拠をもって説明することが大切です。

裁判では「相手の過失のせいで事故に遭って怪我をしたから金払え」と言う方が、下記の列挙事項その他を主張・立証しなければなりません。

  1. 事故があったこと
  2. 相手の過失のせい
  3. 怪我したこと
  4. 損害
  5. その他

被害者は、これらについて実況見分調書・事故発生状況調査報告書等や病院の領収証等によって立証することになります。

さて、本判例において、加害者は自らの責任もあることを認めた上で「被害者の過失による被害の拡大」を主張して過失相殺を求めました。

そのため裁判所は「傘差し運転やサイズ不一致・体格不適合車運転等の過失要素が被害者にもあった」ことを認定した上で、それが事故の発生と損害の拡大に寄与したか否かについて判断をすることにしました。

裁判所は本件を「交差点での出会い頭の事故ではない」としていました。
つまり裁判所は、加害者が交差点右折後に交差点進入以前の被害者と衝突した事故、「対向進行する自転車同士の衝突事故」と認定していたのです。

実はそこに重要なポイントがあったのです。

正面衝突等対向進行する自転車の過失を証明するポイント

発生状況を的確に把握・整理することは、事故に限らず暴行・傷害・いじめ等の事件においても有効ですから、早期段階からしっかりと必要な情報を集めておきましょう。

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裁判上の和解・示談:
裁判上・裁判外の和解書・示談書例

交通事故においては、和解・示談で解決する割合は9割以上と圧倒的に高くなります。
仮に訴訟に至った場合でも、裁判所は判決を出すまでは何度も和解を提案しますので、結局は裁判上の和解が成立することがほとんどです。

和解での解決自体はよいのですが、問題は「過失割合等に関する裁判所の認定・判断が明確に残らない」点にあります。
裁判長が和解を提案し、和解室で各当事者と個別に話をするなどして和解しようとなった後に、裁判長の提案する和解条項の文言にいろいろ注文をつけるようなことは、余程の事がない限りはしません。
そのため、和解書の内容は必要最低限のものになることがほとんどです。

もともと裁判は当事者間の紛争解決手段なので仕方ないとも言えますが、調停・訴訟においてこちらの主張通りの過失割合等に基づいて和解が成立しても、それを他の者が活かしづらいのが難点です。

事故・事件の当事者に
「こういう過失割合で問題が解決した例があります。」
と説明はできても、その証拠を提示することは難しいのが現状で、都合の悪いものは意に介さない相手方・保険会社・弁護士だと、結局、裁判で同じような争いをして和解するといったことが繰り返されます。

ここでちょっと裁判上の和解における調書等の実物に目を通してみましょう。
また、裁判途中で相手が白旗を揚げ、裁判外で示談が成立した際の和解書も参考までに見ておきましょう。

ご覧いただいたように、訴訟・調停等の裁判上の和解においては、当事者の経験したことや裁判長の判断等の情報というものは、法廷や和解室では録音もできませんから、当事者だけが知っている、当事者の経験値にしかならない、という勿体ない事になっている訳です。

なお、和解書・示談書に詳細を明示しないという手法は、裁判外において重宝される場面もあります。

例えば、人に知られたくない事件・事故内容であったり、情報流出等危惧される場合などです。
通常は和解書・示談書を二通作成して各当事者が保管しますが、それを家族に見られたくない場合や会社の監査等によって他人に知られるのを阻止したい場合もある訳です。

そのため、本来は事件・事故内容の詳細を明示して後の問題発生を予防するのが望ましいのですが、シンプルな和解書・示談書の作成と事件記録等として詳細に関する報告書等の作成・保存までを依頼する方がいるのです。

ついでなので、裁判外で成立したそういう場面のシンプルな和解書も参考までに見ておきましょう。

専門家の利用の仕方はいろいろありますので、必要に応じて依頼等検討するとよいでしょう。

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弁護士費用の請求は難しい

弁護士・行政書士等の専門家は、依頼人に対して費用等明確に説明し、費用対効果から依頼人に過度の負担をさせないように気をつけるべきです。

しかし残念なことに、言い訳・誤魔化しを駆使して無駄に引き延ばし、依頼人に過度の費用を請求する者がいます。

返還を求めても、

弁護士:「頼まれたからやったんだ。一応説明はしたが、どうしてもと言うからそれならと。」

などと言われるでしょうから、解任通知を送付する等、書面等でしっかりやっておかないと立証が難しいでしょう。
信頼できる場合でなければ、口頭でのやり取りは避けるようにするか、録音することが大切です。

さて、そうなると事件・事故の被害者は、無駄な専門家費用をどうしようということになるのですが、相手方に請求するのは難しいのが現実です。
弁護士等専門家費用に関しては、場合によっては一割程度認められることもあるとされていますが、やはり厳しいです。

なぜそんなことが言えるのかというと、ある損害賠償請求事件において無理を承知で訴訟代理人として、専門家費用を上乗せして被告に請求した経験があるからです。
驚いたことに、債権額の3分の2にもなる費用を依頼者に請求した弁護士がいたのです。
普通なら依頼者に費用対効果等説明すべきですが、それをせず、ただただ報酬を得ようとした輩がいたという訳です。

証拠もないとのことで、知人にも十中八九無理と説明した上でやるだけやってみることになりました。
もちろん業務としてではありませんから、裁判所の許可を得て訴訟代理人になっています。
結果は、予想通りその部分(下記判決書の事実及び理由:第1:遅延損害金を請求していない部分)は「棄却」されました。
ですから、下記判決書の主文3の通り訴訟費用も5分の2が原告の負担となり、理由として判決書P5のように判示された訳です。

二件目の訴訟費用額確定処分は上記とは別件になりますが、やはり専門家費用は損害として認められず、認容されたのは請求額の7分の6でした。
こちらは判決書が手元にありませんでしたが、P2:別紙計算書の通り、相手方訴訟費用額7分の6と按分されていますので、その旨が確認できると思います。

弁護士費用が特別損害と認められるか否かは、各当事者の力量差(例:弁護士 対 法律がよく分からない者)や相手方の言動、その他いろいろな状況によって変わってくると思います。
また、判決書P5の非公開部分で裁判長が判示した点をクリアにすれば、認められる可能性が高くなると思われますが、かなり厳しいものとであると念頭に置いておきましょう。

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自転車事故:回避動作の向上

● 肩甲骨・股関節操作:重心移動・転身・方向転換:事故回避動作の向上

自転車運転者・歩行者のそれぞれが衝突回避動作を楽に行えるような状態を心がけることで事故の防止に役立てることができます。

自転車運転者であればハンドルの持ち方を変えるだけで肩の力みが抜けて把持力が向上し、咄嗟の場合のブレーキ操作も楽にできるようになります。

歩行者であれば自転車が多い場所での歩き方を変えるだけで重心移動がスムーズになって回避し易くなり、仮に衝突した場合でも衝撃を逃がし易くなります。
日頃から下動画のように重心を確認しながらゆっくりと転身・回れ右・足を踏み出してからの重心の入れ替え等を行うなどしておくとよいでしょう。

  1. まずは足を前後に開いて左右にゆっくり一回転。
  2. 足を踏み出して180度転身。
  3. 足を前後に開いて180度転身。
  4. 足を後ろに引いて180度転身。
  5. 重心を左右に少しずつズラしながら身体の向きを適当に変えてみる。
  6. 転身から歩き出す。

などして、股関節に乗る感覚を楽しむようにしましょう。

肩甲骨面からの簡単なコツは下記の通り(右に方向転換をする場合)。

  1. 左肩甲骨を軽く外転させる。
  2. その状態を保持したまま肩甲骨を下げる(骨盤も連動)。
  3. 左肋骨が上から順番に前に押し出される。
  4. その流れにまかす。

感覚が分からない場合などは、たとえば次のように操作・意識します。
軽く肩鎖関節を前斜め下方向に下げて肩甲骨を下方回旋(肘が横のため)させ、肋骨のずれる動きを引き出して流れにまかせて腸骨の閉じる動きの連動で方向転換する。
肩甲骨と骨盤は連動するので特に気にすることはありません。

なお、転身・方向転換の際の天敵は「上下動」です。
上下動を抑えるためには、有名な「天から吊り下げられたる」姿勢で立つという意識です。
これに深く踏み込む必要はありません。
要は、身体に鉛直双方向の力が掛かっており、バランスを取りながら立っている、ということを知っておけばよいだけです。

これが分かりづらい場合には、
「身体において上向き・下向きに動いている部分を知覚し、そのバランス取るために緊張・弛緩が働いている部位を把握し」、
それを心がけておくとよいでしょう(軽身術)。
自分自身で知覚・確認ができることですから、もっとも時間短縮ができるでしょう。

その他関連・詳細等は、下の目次から
肩甲骨操作・立甲等、忍術の活用と首・肩凝りの解消等健康の回復・増進:大和神流:忍体“操術”
をご確認ください。

※ 動画に関する注意
動画の多くはどちらかというと初心者向けです。
動き等分かり易くするためにわざと緊張させた状態にしていたりしますが、意識して緊張させることができれば弛緩させることもできるようになります。

  1. はじめに
  2. 自然治癒力の向上・健康の増進への操術の活用:
    癌・抗癌剤の副作用 痛み・疾患と闘うための忍体「操術」壱式:身体・動的自然呼吸調整
  3. 身体操作・肩甲骨操作に際しての注意事項
  4. 肩と肘の連動・操作
  5. 肩甲骨を立てる・立甲・ゼロポジション
  6. 四つん這い状態での立甲トレーニング・エクササイズの注意点
  7. 肩甲骨エクササイズ
  8. 肩甲骨エクササイズ_2
  9. 肩甲骨エクササイズ_3
  10. 肩甲骨エクササイズ_4
  11. 肩甲骨エクササイズ_5:肩・首・背中の凝りの解消、凝りをほぐす
  12. 肩甲骨エクササイズ_6 ダイエット
  13. 組体操 人間ピラミッドの強化方法
  14. 方向転換・転身・重心移動
  15. 一本歯高下駄の活用
  16. 忍体「操術」活法:零式(中級):肩抜きによる胴体と腕の分離
  17. 自転車事故の予防と安全性の向上:ロードバイク・自転車運転の操作性・安定性・力の伝達力を引き上げるハンドルの握り方と身体操作

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