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自転車事故の過失割合算定サポート

交通事故の問題解決に必要な武器は「情報」と「戦略」です。
判例タイムズ等の過失相殺基準を用いる基本的な過失算定・修正方法に加えて、各事故類型における「過失割合算定・異議申立のポイント」を知れば、適正な過失割合での問題解決が可能となります。
また、各事故類型における必要最低限の目の付け所も知っておきましょう。
例えば、出会い頭の事故であれば「衝突地点」が最重要ですが、正面衝突であれば「・・・(衝突地点ではない)」といった具合です。

事故発生状況を的確に把握・整理し、正しく「過失」を知れば嘘や捏造等用いる悪質な加害者・保険会社・弁護士等が相手でも怖くはありません。

※ 自転車事故の「過失算定」でやるべきこと
これはズバリ判例タイムズの過失相殺率(自転車→クルマ)を準用できる場合とできない場合の峻別です。
判例タイムズの基準等を機械的に当てはめただけのものは砂上の楼閣であることを念頭に置いておきましょう。


上記峻別方法の具体的手順と法令・判例等から明確な根拠等の詳細を明記して解説しています。

なお、自転車同士・自転車対歩行者の事故については、その事故態様別等から相手・弁護士等の嘘を暴くための「種まきポイント」が存在します。

それらを知っておけば、後に嘘を吐かれても簡単に引っくり返せます。
特に問題となる以下の三つの事故態様についての「種まきポイント」の詳細を根拠・理由も明示して解説したマニュアルを用意しておりますので、必要に応じてお求めください。

ページ内容

  1. 過失算定の武器は「情報」と「戦略」
  2. 平成20年2月29日名古屋地裁判決 自転車同士の事故
  3. 過失とその具体的内容
  4. 過失判断基準の「合理的平均人」
  5. 判例の過失割合判断の変更は可能
  6. 自転車同士の事故の過失割合の基本的な算定手順
  7. 自転車同士の出会い頭の事故の重要ポイント
  8. 自転車同士の出会い頭の事故の基本過失割合
  9. 自転車事故過失算定マニュアル:基礎:出会い頭の事故
  10. マニュアル:1:判例タイムズ:クルマ同士の出会い頭の事故の基本過失割合
  11. マニュアル:2:自転車同士の出会い頭の事故態様
  12. マニュアル:3:保険会社・弁護士の無知・悪質な嘘
  13. マニュアル:4:当事者双方の義務の重さ
  14. 交差点での出会い頭の事故:一方が優先道路側の歩道を走行
  15. 交差点での出会い頭の事故:過失を押し付けられる事例
  16. 自転車事故の過失要素と過失修正
  17. 著しい過失と重大な過失
  18. 自転車事故の過失要素とその修正値
  19. 過失の程度の差を考えることの重要性「傘差し運転・片手運転」
  20. 過失要素の細分化検討と必要性
  21. 過失修正の基本的な検討要素
  22. 目に見えない過失要素の証拠確保
  23. 視力・視野狭窄等の眼に関する問題
  24. 自転車の徐行速度
  25. 高速度・スピードの出し過ぎ
  26. ヘッドホン・イヤホン・耳あて使用
  27. 二人乗り
  28. サイズ不一致・体格不適合
  29. 自転車同士の正面衝突事故
  30. 自転車事故対歩行者の事故

過失割合算定の武器は「情報」と「戦略」

  • 情報は、事件・事故発生状況(発生前~発生時~発生後)に関する事実関係等、法律の規制・損害賠償請求・過失等の知識、相手方に関することや証拠・証言の収集・確保と保持、その他を含みます。
  • 戦略は、事件・事故発生状況の的確な把握・整理をした上でどのように情報を集め、情報をどのように使い、どのタイミングで出すかなどです。

自転車事故の高額な損害賠償事例が増えているからこそ10%の過失修正でもに大きな影響がでますので、まずは一般的・基本的な過失算定手順を知っておきましょう。

  1. 事故発生状況の的確な把握・整理を行った上で、
  2. 過失要素を細分化して検討し、
  3. 客観的・主観的・状況等の証拠、実情、経験則等を根拠に事実関係を整理し、
  4. 第三者にも分かり易く、事故発生状況に即した的確な指摘・説明等のやり方を練り上げ、効果的な表現を用いる

判例タイムズの過失相殺基準を機械的に当てはめるだけ・相手の過失要素をただ単に並べ立てるだけでは、明らかな過失要素さえ見逃します(若い弁護士に特に多い)ので注意しましょう。

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平成20年2月29日名古屋地裁判決 自転車同士の事故

まずはこの判例を確認する(判例のページに戻る)

相手方の法令違反等の過失要素を挙げて、
加害者側:「被害者には~の義務があったのにこれを遵守していなかった。危険行為だ。だから被害者には過失がある。○%の過失の修正がなされて然るべきだ。」
などと、相手の義務違反を並べるだけでは裁判長から「立証が薄い」と言われてしまいます。

事故発生状況を把握したら、後は「被害者自身の過失要素が損害結果にどのような影響を与えたか・どのように作用したか」を根拠をもって説明することが大切です。

なぜこんなことが言えるのか?

同様の事故態様で、本判例を用いて「過失がない」と主張した相手方と闘い、「加害者対被害者(依頼者)=20対80→70対30」・「加害者(依頼者)対被害者=100対0→50対50」の事例等の経験があるからです。

裁判では「相手の過失のせいで事故に遭って怪我をしたから金払え」と言う方が、下記の列挙事項その他を主張・立証しなければなりません。

  1. 事故があったこと
  2. 相手の過失のせい
  3. 怪我したこと
  4. 損害
  5. その他

被害者は、これらについて実況見分調書・事故発生状況調査報告書等や病院の領収証等によって立証することになります。

本判例において、加害者は自らの責任もあることを認めた上で、
加害者側:「被害者の過失で被害が拡大してるんです。」
として過失相殺を主張したので、加害者はこの部分に注力してそれを立証しなければなりませんでした。

本件において、裁判所は、「傘差し運転やサイズ不一致・体格不適合車運転等の過失要素が被害者にもあった」ことを認定した上で、それが事故の発生と損害の拡大に寄与したか否かについて判断をすることにしました。

また、裁判所は本件を「交差点での出会い頭の事故ではない」としていました。
加害者が交差点右折後に交差点進入以前の被害者と衝突した事故、つまり「対向進行する自転車同士の衝突事故」と認定していたのです。

実はそこに重要なポイントがあったのです。

発生状況を的確に把握・整理することは、事故に限らず暴行・傷害・いじめ等の事件においても有効ですから、早期段階からしっかりと必要な情報を集めておきましょう。
参考:歩行者同士の接触を原因とする暴行傷害事件

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過失とその具体的内容

被害者・加害者を問わず過失相殺を主張することは悪いことではありません。
事故発生状況や相手の発言等から相手方の過失が考えられる場合にはそれらに対してきちんと異議・指摘・主張等するようにしましょう。

それでは、過失割合の問題を解決をするための重要なパーツをみていきましょう。

  1. 過失とは
    「一定の結果発生を予見し、回避することが可能であったにも関わらず、その結果発生を回避すべき措置を取らなかったということ」です。
    過失は規範的要件ですので、それを基礎づける具体的事実が、民事訴訟においても主張・立証しなければならない要件事実となります。

    「過失」を悪用して被害者・加害者を騙す保険会社・弁護士が現実におりますので注意しましょう。
  2. 具体的要件事実と義務の具体的内容
    具体的な要件事実がどういうものなのかというと、
    「加害者に、結果を回避する義務が発生したこと」
    「加害者が結果回避義務を怠ったこと」
    の2つになります。

これらを自転車事故に当てはめて考えると、

  • 結果回避義務の発生は、
    「運転者が道路を走行する際には、衝突事故など起きないように法令等のルールを守って安全に運転する注意義務等が発生している」ということです。
  • 「結果回避義務を怠る」というのは、
    「前方不注視やハンドルブレーキ操作の不適切等の何らかの過失によって事故を起こしてしまった」ということです。

現状では、交通事故に遭ってしまうと、自転車運転者は「結果回避義務を怠っていた」のだとほぼ決め付けられてしまっています。
たとえあなたが交通ルール・法令等を遵守していて実際は相手にぶつけられただけだったとしてもです。

自転車事故の過失割合の一般的・基本的な判断方法は、事故類型から判例タイムズ等の基準に当てはめて、まずは基本過失割合を決定します。
判例タイムズ等の過失相殺基準における基本過失割合のほとんどは、双方に過失がある状態から始まっているため、過去の事例と事故類型が同じであれば、とりあえず同じ基本過失割合とされることになります。

例えば自転車同士の正面衝突事故が起きたとしましょう。
センターラインの無い道路で、対向進行してきた相手がセンターを越えてあなたにぶつかってきた場合、判例タイムズの基準にあてはめると基本過失割合は「あなた:相手=20:80」です。

相手がすれ違うまさに直前に突然飛び出したために避けきれずに衝突したとしても、一律にあなたに20%の過失ありとされます。
これはまさに事故類型によって決め付けられた例であると言えるでしょう。

そして、これを覆すには、あなたが相手の過失を主張・立証しなければならないのです。
もし、この例で相手方が大怪我をした場合には、一方的にぶつけられただけのあなたの負担は増すばかりということになります。
だからこそ、しっかりとポイントを見極めなくてはならないのです。

そのためには、「過失」を正確に知る必要があります。

「過失」はあなたにとっての強力な武器になり得ますので、無料相談等利用して「過失」の説明を受けておくとよいでしょう。
その際は、必要な判例等の資料を用いて根拠を示すことのできる専門家を選ぶようにしましょう。

後述の自転車事故過失算定マニュアル:基礎:出会い頭の事故において簡単に説明しています。

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過失判断基準「合理的平均人」

加害者の結果回避義務の具体的内容は、特定された加害者本人の具体的な能力を基準として定立されるもの(いわゆる具体的過失)ではありません

過失を判断する際に「人それぞれの能力を検討する」となると大変になってしまうので、判例も多数説も「合理的な平均人」を基準として過失を判断するとしています(いわゆる抽象的過失)。

これを簡単に言うと、「普通の人だったらすぐに分かるでしょ!」といったところでしょうか。

例えば、誰もが認める人並みはずれた自転車操作技術を身につけていたある者が片手運転をしていて、あなたと衝突事故を起こした場合を考えてみましょう。
そしてこう言うのです。
ある者:「俺の運転技術をもってすれば、片手運転でも普通の人よりはるかに安全に運転できる。危険な状態とは言えないんだから俺の片手運転は過失にはならない。だから過失相殺なんてされるいわれはない。」

もしこれが認められるのであれば、技術さえあれば何でもありになってしまうかもしれません。だからこそ、一律に「合理的な平均人」を基準として過失を判断するようにしているのです。

つまり、このような場合でも
あなた:「普通の人なら片手運転ではハンドル・ブレーキ操作が適切にできませんよ。それに、あなたが両手で運転していたら衝突を回避できたかもしれないでしょう。だから過失がありますよ。」
と言える訳です。

ただ、場合によっては「特殊な事情」も考慮される可能性がありますので、そこは注意が必要です。

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判例の過失割合判断の変更は可能

相手方保険会社や弁護士の決まり文句に、よく「こういう判例がありますから。」というのがあります。
確かに判例があると、それを覆すのは大変な作業となります。
しかし判例は、あくまでもその時に訴訟の対象となった個別の事故事例についての判断です。

そのため、あなたが事故発生状況を的確に把握・整理をして、相手の故意・過失要素を細分化して検討し、証拠・実情・経験則等に基づいた的確な異議・指摘・主張・立証ができれば、判例の過失判断も変更することが可能となる場合があります。

たとえば、私は自転車同士の正面衝突事故において、
「加害者の傘差し運転は、本件衝突事故において重大な過失にあたる。」
と主張しましたが、日弁連の交通事故法律相談の弁護士複数名、相手方保険会社顧問弁護士などから、
大勢の方たち:「それは判例からあり得ない。」
とさんざん否定されました。

なるほど、確かに判例タイムズ等では、傘差し運転等の片手運転を、せいぜい著しい過失程度と扱っているようです。
しかし、事故直後から最悪の場合を想定して事故発生状況等整理していたこともあって、横浜地裁での損害賠償請求訴訟において的確な指摘・主張を行い、相手の傘差し運転が重大な過失と認定された上で和解成立となりました。
このことは、たとえ判例や判例タイムズの基準等があっても、個別の事故発生状況によって過失の軽重が変わるという一つの具体例です。

相手方の過失要素の一つ一つに着目して過失の程度の差を明確にし(後述)、証拠・経験則等に基づく的確な主張・立証ができるように準備しておきましょう。
ただし、過失要素を並べてその相殺率から算定するだけではあまり意味を成しませんので注意が必要です。

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自転車同士の事故の過失割合の一般的・基本的な算定手順

自転車同士の事故の場合、軽車両同士ということで基本的には四輪車対四輪車の過失割合の算定基準を準用します。

しかし、四輪車対四輪車の過失割合の算定基準を用いるのが明らかに間違いの場合もありますので注意が必要です。
例えば、十字路・T字路・丁字路などの交差点における自転車同士の出会い頭の事故の場合がそうです。
これに関しては、次の自転車同士の出会い頭の事故で解説します。

さて、交通事故・自転車事故の過失割合の算定・過失相殺率の認定基準としては、主に以下の三つが使われています。

  • 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(別冊判例タイムズ)
  • 交通事故損害額算定基準(青い本)
  • 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)

ここで通常の「過失割合の算定方法」を簡単に見ておきましょう。
まずは以下の三つの算定手順を踏みます。

  1. 上記相殺基準の事故態様等(判例の事故類型だけではないので要注意)から「基本過失割合」を決定する
  2. 当事者の過失要素による修正をする(ここまでが基本算定)
    現在、多くの保険会社・弁護士がここまでの手順しか踏まずに過失割合を算定するので要注意です。
    なお、過失修正要素には、速度違反や徐行義務違反などの「個別的修正要素」と、著しい過失や重過失といった「一般的修正要素」がありますが、難しく考えずに「道路交通法等法令に違反する行為」や「事故の危険・原因につながる故意・不注意」などと考えておきましょう。
  3. 事故発生状況による個別の過失修正

※ 事故類型別の過失相殺基準に対する注意点

過失割合について判例タイムズの典型例を基に過失割合を紹介している専門家が増えていますが、大切な注意点があることを忘れてはなりません。
判例を利用する場合は、その判決の「過失判断・事実認定」を明確にしなければなりません。
切り取られた一場面では全く意味がありませんので、相談する際などはその点の説明を求めるようにしましょう。

さて、例えば走行中に追突事故に遭った場合には、基本的には次のように算定します。

  1. 相殺基準の事故態様等から「基本過失割合」を決定する
    走行中の追突事故態様から「追突された側 対 追突した側 = 0 対 100」
    つまり、基本的に追突した側が100%悪いと考える訳です。
  2. 当事者の過失要素による修正をする
    例えば、追突された側が走行中に不用意な急ブレーキを掛けていた場合にはどうなるのでしょうか?
    この場合には、不用意な急ブレーキが追突された側の過失要素となり、
    「追突された側 対 追突した側 = 30 対 70」と、大幅に追突された側の過失が加算修正がなされます。

このように相手の過失要素によって過失割合が大きく変更されますが、以上はあくまでも基本的な算定手順ですので注意が必要です。
それでは、出会い頭の事故を見ながら適正な過失割合算定の考え方を見ていくこととしましょう。

なお、判例タイムズ等に明記されている基本的な過失相殺率(上記では「不用意な急ブレーキ=30%」)などは、実は全く関係ない事故類型の場面でも異議申立に活用することができます。

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自転車同士の出会い頭の事故の重要ポイント

自転車同士の出会い頭の事故においては、たとえ判例であっても過去のものはあまり役に立ちません
この理由は、いずれ明確になりますが、ここで重要なのは、自転車同士の出会い頭の事故の過失割合の算定においては、判例タイムズの四輪車(クルマ)同士の基準をそのまま単純に当てはめるのは明らかな誤りだということです。
それを利用して右方車に過失を押し付ける保険会社・弁護士の嘘に騙されないよう注意しましょう。

必要なものは「情報と戦略」です。
難しく考える必要はありません。「自転車同士の出会い頭の事故は左方車側の過失が大きくなる」という仕組みを知り、その理由を説明できればよいのです。

これについては、以下の「自転車事故過失算定マニュアル:基礎:自転車同士の出会い頭の事故」において説明します。

ここで大事なことは、交差点での自転車同士の出会い頭の衝突事故は衝突地点によって過失が大きく異なるということです。
クルマはキープレフトですが、自転車はキープレフトサイドであること、その他クルマとは違う自転車の性質等から明白です。

事故発生状況の把握・整理において、まず確認・特定しなければならないのは「1:衝突地点」です。

そしてもう一つ、衝突地点とセットで重要な役割を果たす「2:・・・(確認事項)」があります。
これは、警察の実況見分でも重要なポイントとなります。
また、「3:・・・」も重要です。 これらを基に事実確認・質問・異議申立事項を組み立てると、自転車事故における過失を浮き彫りにでき、相手の嘘を予防することもできます。

その他、以下のような確認事項があります。

  1. 信号機の有無
  2. 一方が優先道路か否か
  3. 一時停止義務があるか
  4. 歩道上での事故か
  5. 歩道走行の場合、自転車通行可であるか
  6. クルマ同士の基準を用いても問題ない場所や状況か
    実はほとんどの場合、使えないのが現状です。
  7. その他法令違反があるか
  8. 法令に限らず、道路交通の上で特に注意すべきことはないか
  9. 相手の過失を主張する側が客観的証拠をもって立証できるか
  10. 当事者の主張が事故発生状況等の証拠からあり得ないものではないか
  11. 見えない過失があるか

事故発生状況によって、警察や役所等への確認、その他目撃者や映像等、細かい調査等を要する場合もあります。
最適な方法は事故発生状況等により異なりますので、分からないことがある場合にはできるだけ早い段階で専門家へ相談することを検討しましょう。

それでは、以下で自転車同士の出会い頭の事故の基本過失割合を見ておきましょう。

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自転車同士の出会い頭の事故の基本過失割合

交差点での自転車同士の出会い頭の事故では、信号機がある場合は通常はそれに従いますので、見込み発進等がなければ、あまり揉めることはない場合が多いようです。

※ ただし、左方車・右方車双方が歩道走行の場合は要注意ポイントがあります。

しかし、信号機のない交差点での自転車同士の出会い頭の事故の場合、未だに右方車側に過失が押し付けられる傾向が強いので、以下に簡単な基本過失割合を列挙します。

過失割合の表示は「左方車:右方車」になります。
特に記載がなければ、双方が車道走行・同程度の速度になります。
「~」となっているのは、ある条件により変化することになるからです。

  1. 同程度の幅員の道路 90:10
  2. 左方車が優先道路 80:20
  3. 左方車が歩道 90:10~70:30
  4. 双方が歩道 60:40~40:60
  5. 右方車が歩道 90:10~80:20

上記の基本過失割合を根拠をもって説明できると円滑な問題解決につながります。
実際、上記基本過失割合に準じた変更を勝ち取った方のほとんどが、書面作成相談後にご本人自身で示談に臨んでいます。

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自転車事故過失算定マニュアル:基礎:出会い頭の事故

はじめに

自転車事故で最も多い自転車同士の出会い頭の事故の事例を用いて、適正な過失割合の算定のための情報等について、可能な限り分かり易く説明していきます。

自転車同士の衝突事故の過失割合については、判例タイムズの四輪車(クルマ)同士の基準をそのまま単純に当てはめるのは明らかな誤りです。
まずはこれを知り、考え方の基礎をしっかりと確認することが何よりも大切です。

それでは、以下で過失算定の問題点等を見ていきましょう。

※ 当初「個人向け自転車事故対応マニュアル」のみ一部公開の予定でしたが、相手方から専門用語等で誤魔化されることのないよう、「専門家向け自転車事故過失算定マニュアル」の記載の一部も必要に応じて加えることにしました。
さらに突っ込んだ内容や法的な説明方法・文例、悪質な(無知も含む)保険会社・弁護士の手口等も、随時加筆等行います。

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1:判例タイムズ:クルマ同士の出会い頭の事故の基本過失割合

まずは最も基本的な事故類型である「信号機等の無い同幅員の交差点における四輪車同士の出会い頭の衝突事故」の基本過失割合を見てみましょう。

双方が同程度の速度の場合です。下図をご覧下さい。

四輪車同士の出会い頭の衝突事故の基本過失割合

この場合、双方が同程度の速度であれば、別冊判例タイムズの基準を用いた基本過失割合は「左方車:右方車=40:60」です。

これを検討してみると、同レベルの車両の「出会い頭の衝突事故」の過失割合の基本が見えてきます。

まずいろんなルールを取り払って考えると、同幅員の交差点における四輪車同士の出会い頭の衝突事故は、双方が同程度の速度であれば、基本的な過失割合は「50:50」から出発していることが分かると思います。
なぜなら、クルマには左方車が優先という基本ルールがあるからです。
クルマの左方車優先ルールによって、本来「50:50」である過失割合を、最初から10%修正しているのが別冊判例タイムズの「左方車:右方車=40:60」という基本過失割合です。

これが自転車だと、全く事情が異なります。
自転車同士の出会い頭の衝突事故は衝突地点の影響を大きく受けます。また、クルマと自転車の車幅の問題もあります。

ここで、上記のクルマ同士の出会い頭の事故の基本過失割合の状況図をもう一度確認して下さい。

左方車は道路のどの位置にいるのか?
自動車教習所でしつこくキープレフト言われます。当然、クルマが左側通行をしていることが前提です。

では、自転車は?
これはもちろん、原則車道左側端通行です。「中央より左側」という生易しいものではなく、左側端です(後述)。

もうお分かりでしょう。
自転車が車道の左側端を通行していた場合、左方車と右方車の双方が出会い頭の事故を起こすってどういう状態になりますか?
もちろん、双方は直進しています。その場合、下図のようになります。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

ズバリどっちが悪いでしょうか?

これはもちろん左方車です。

左方車優先というのは、もちろん自転車にもあります。
しかし、右方車は交差点に明らかに先入し、交差点を渡り終える所近くまで来ています。
この状況においても左方車が優先するならば、左方車は、右方車に次のように言えることになります。

左方車:「クルマの行き交う交差点の真ん中に停止して、自分を先に通せ。」

もちろん、こんな馬鹿なことは言えません。
交差点での事故における明らかな先入は、右方車の過失が減算されます。
これは、判例タイムズにも明記されている過失修正要素です。

交差点では横断を速やかに完了すべきです。
確かに交差点内において衝突の危険があれば、停止するなどして危険を回避する必要があることは言うまでもありません。
しかし、上記の状況では、まだ交差点に進入する前の状況である左方車が停止すべきです。
この状態で左方車が衝突したのであれば、これはもう左方車優先云々ではなく故意にぶつけにきたとしか考えられないような状況です。

さて、クルマ同士の出会い頭の事故の基本過失割合は「左方車:右方車=40:60」でした。
自転車同士の出会い頭の事故に、クルマ同士の判例タイムズの基準をそのまま当てはめられますか?

答えは、否です。

それだけでは微妙ですか?
では、さらに突っ込んで見ていきましょう。

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2:自転車同士の出会い頭の事故態様

交差点での自転車同士の出会い頭の事故態様で最も多いのは、下記のような状況です。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

信号機等の無い同幅員の交差点・双方が同程度の速度における判例タイムズのクルマ同士衝突事故の基準との違いは、もうお分かりでしょう。

そうです。クルマ同士の基準においては、衝突前の段階で下記の事が前提となっているのです。

  1. 左方車は、法令違反をしていない。
  2. 左方車は、交差点において衝突の危険を高める行為もしていない。

その場合のクルマ同士の衝突事故の基本過失割合が「左方車:右方車=40:60」です。

しかし、自転車同士の事故の出会い頭の事故の多くの場合は、衝突前の段階で下記の状況にある訳です。

  1. 左方車は、法令に違反して「逆走」している。
  2. 交差点において、この行為こそが法令を遵守して走行する右方車との衝突の危険を最も高める行為である。

クルマで表せば、下記の状況で事故が起きたのです。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

どうですか? 危ないでしょう。クルマは本来は車道左側通行ですからね。

自転車はさらに悪いんですよ。それはなぜか?

前述した通り、自転車は原則車道左側端通行という法律上の義務があるからです。
クルマのように「中央より左側」という生易しいものではなく、左側端、つまり、もともとクルマよりも厳しく通行場所が制限されているという事実がある、ということです。

左方車の本来の通行すべき場所は下図の通りです。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

そうであるのに、こんなとこ(下図)走って事故を起こしちゃまずいだろう、という訳です。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

左方車がルールさえ守っていたら、上図の衝突地点で事故は100%起こりません
双方が徐行してなかろうが、前方不注視だろうが、です。そして、左方車の逆走自体は「故意」に行われています。

左方車:「自分が車道の右側端を走行していることを知りませんでした。」

なんて、そんなバカなことは通用しません。そうなると今度は、

左方車:「車道の右側端を走行せざるを得ない場合もある。」

などと主張する者がいますが、残念ながらそれも通用しません。
もしもそんなことを言われたのなら、ぜひ「衝突回避のために右側端通行をやめる、もしくは自転車を押して歩く」という選択をせず「交差点で衝突の危険性を高める行為を続けざるを得ない場合がどういうものなのか」を説明してもらいましょう。

ちなみに、そのような場合には私は自転車を降りて押していますし、他にもそうしている方が大勢いらっしゃいます。
事故が発生した以上、ルール違反をしていた者にペナルティが科されるのが当たり前です。

上記以外にも、交差点での徐行義務等や右方車の予見可能性・回避措置義務等のいろいろな問題があります。
しかし、それらは過失の修正をする段階で検討すべきことであり、クルマの場合もそうです。

ここでは、交差点での自転車同士の出会い頭の事故の多くが、左方車が交差点において衝突の危険性を最も高める違法行為をしていたということが、前提としてあるということを知っておきましょう。
また、衝突の危険回避の容易さは、車幅・操作性等クルマと自転車では大きく異なることが挙げられます。

さて、そうであるなら自転車同士の出会い頭の事故の基本過失割合は「左方車:右方車=100:0」なのか、というと、それは早計です

その理由は以下で明らかになりますが、ここでは、ある条件によって左方車:右方車=100:0もある、ということを知っておきましょう。

さて、左方車のルール違反がなければ「上図の衝突地点で事故は100%起こらない」のですから、この時点でも、あなたはやはり突っ込んでみたくなるでしょう。

という訳で、上図の事故態様と類似した他に法令違反等はない事例で、某海上火災保険会社の担当者と顧問弁護士に突っ込んでみました。

もちろん、物事には聴き方や文章の書き方というものがありますから、目的に応じて後の問題解決に活用できる文章の内容・構成等を考え、かつ失礼のないようにする必要があります。

また、「最初から必要以上に詳しく聴かない」ということも大切です。
理由の一つは、質問に対する相手の対応如何によって相手の誠実さ等を量り、その後の闘い方を決定するためです。
また、場合によって相手の悪質さ・不誠実さを立証するための証拠になることがあるからです。

他にも理由がありますが、ここでは割愛します。

さて、これに対してどういう回答がされたのかというと、下記の通りです。
※ 保険会社・弁護士の対応等は、相談者等にご協力いただいて「保険会社・弁護士等の事故類型別対応事例集」に蓄積しているものです。

  1. 「軽車両同士、双方に安全運転注意義務・回避義務がある。交差点で右側通行をする自転車があることくらいあなたは予測(予見)できたはずです。 そうであるなら、あなたは事故が起きないように安全に運転して衝突を回避すべきでした。回避できなかった以上、あなたにも過失がありますよ。」
  2. 「左方車の右側通行はそれほど問題はない。道路の右側を走行している自転車なんていっぱいいる。
    自転車の運転には免許制度がないため、道路交通法規が一般には周知徹底されていない。だから自転車同士の事故にこれを適用すべきではない。」

上記の回答には、保険会社・弁護士の無知や悪質な嘘によるものが含まれています。
このような対応は、自転車同士の出会い頭の事故に限らず出てきますので注意が必要です。

以下で、上記対応への対処法を見ていくこととしましょう。

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3:保険会社・弁護士の無知・悪質な嘘

前記の回答には、保険会社・弁護士の無知や悪質な嘘によるものが含まれていますので、もう一度よく見てみましょう。

  1. 「軽車両同士、双方に安全運転注意義務・回避義務がある。交差点で右側通行をする自転車があることくらいあなたは予測(予見)できたはずです。 そうであるなら、あなたは事故が起きないように安全に運転して衝突を回避すべきでした。回避できなかった以上、あなたにも過失がありますよ。」
  2. 「左方車の右側通行はそれほど問題はない。道路の右側を走行している自転車なんていっぱいいる。
    自転車の運転には免許制度がないため、道路交通法規が一般には周知徹底されていない。だから自転車同士の事故にこれを適用すべきではない。」

ここであなたは「過失」について正確に知る必要があります。
過失を知らないということは、「過失ではない行為」と区別することができないということです。
難しいですが、事故の当事者にとっては大変重要です。

過失とは
「一定の結果発生を予見し、回避することが可能であったにも関わらず、その結果発生を回避すべき措置を取らなかったということ」です。

これが判例の立場です。

ここ、とても重要です。

その理由は、悪質な保険会社や弁護士が、あなたを騙すために策を弄する部分の一つだからです。
法律のプロ中のプロである弁護士が「過失」を正確に知らないはずはありませんから、前記のように言われたのであれば悪質な輩の可能性があると考えてよいでしょう。
保険会社の場合には、判例タイムズなどの機械的な当てはめしかできない担当者の無知の場合が多くありますので、その点を念頭に置いておきましょう。

自転車同士に限らず、クルマ同士、自転車対歩行者の交差点での出会い頭の事故は、こういう輩の大好物です。
他には、例えば、相手がいきなり飛び出したために「危ないっ。」と思った瞬間に衝突されて回避する間もなかった場合などに当てはまります。

上記1の発言の何が問題なのか、あなたは気づくことができますか?

「過失」はあなたにとっての強力な武器になり得ますので、しっかりと「過失」を確認しておきましょう。

それでは、簡単に見ていきましょう。
上記の保険会社・弁護士の発言は、「予見可能性を重視」する考え方です。
簡単に言うと、

  1. 結果が起こるかもしれないと予見さえできれば、それに基づいて回避すべき義務があった。
  2. 結果が発生した以上、結果発生の回避が可能であったかどうかにかかわらず、過失がある。

とする考え方です。

この考え方は、全くのもらい事故、例えば居眠り運転などが原因で、追突・センターラインを突然超えてきた対向直進車に正面衝突されたりなど、回避が不可能だった場合にも、道路交通の上ではそれすら予見可能であるとして、広く過失が認められる結果となる訳です。

しかし、判例の立場はそうではありません。

判例は、権利侵害という結果を回避する注意(措置・行為)義務に違反することが過失である、という「結果回避義務違反説」をとっています。
これは、昭和53年8月3日の東京地方裁判所判決から判例の立場として定着し、平成18年3月13日の最高裁判決もこれを支持しています。

裁判所は、予見可能性を前提として、結果回避のために適切な措置をとるべき注意義務(結果回避措置義務)に違反していないかを判断します。
つまり、結果発生の予見可能性があれば、運転者に「過失がある可能性が生じているので過失の有無を検討する」が、予見可能性がなければ、運転者に「過失なし」と判断される訳です。

結果回避義務の違反を判断する前提として「予見可能性の存在を必要とする」ことは、上記東京地裁判決
「(過失とは)その終局において、結果回避義務を言うのであり、かつ、具体的状況の下において、適正な回避措置を期待しうる前提として、予見義務に裏づけられた予見可能性の存在を必要とする」
から明白です。

ですから、「結果が発生した → 過失あり」とはなりませんし、また、「回避できなかった過失がある」などと簡単に言えるはずがない訳です。

しっかりと事故発生状況の把握・整理をした後、ある条件を満たすか否かを判断することが大切です。

さて、それでは、過失の判断基準はというと?

「合理的平均人」、つまり「普通の人だったらすぐに分かるでしょ!」ということです。

それに上記の場合を当てはめるとどうなりますか?

  1. 左方車は、交差点において、車道の左側端を走行する右方車と出会い頭で衝突する可能性を「容易に」予見することができた。
  2. その回避は、左方車が道路交通のルールを守るだけで「容易に」回避できた。
  3. にもかかわらず、左方車は、逆走という交差点での出会い頭の衝突事故発生の危険を高める違法行為をやめることなく(結果回避行為を取らず)交差点に進入した。
  4. 結果、右方車と衝突した。
  5. 左方車が道路交通のルールを遵守していれば、本件事故は絶対に起こることはなかった。
  6. 左方車が損害を賠償すべきだ。

と、なる訳です。
左方車が違法行為を継続することによって、衝突事故発生の危険が高まっている点が重要です。

対して、右方車は適法に車道の左側端を走行しているのですから、それを非難される謂れはない訳です。

ここでは、事故発生状況が下図の通りでした。

自転車同士の出会い頭の衝突事故

2の発言に対しては、下記のように言うことになります。

  1. 左方車の法令違反は厳然たる事実。
  2. 法が周知徹底されてないから適用すべきでない、は論外。
    法を知らなければ許されるということはない。無法者天国か。
    そもそも、いつから法の適用の是非を自由に決定できるようになったんだ。
  3. 左方車は、右側通行(違法行為)自体を認識している。
  4. 左方車の違法行為がなければ、本件の衝突地点で100%事故が起きていない。
  5. 違法状態を継続して交差点に進入した左方車の行為は、交差点において法令を遵守する者(右方車)との衝突の危険性をもっとも高める行為だ。
  6. そんなことは合理的平均人ならば、容易に理解できる。
  7. 結果発生は容易に回避可能 → ルールを守るだけ。
  8. 無法者と法令遵守者の事故において、法令遵守者に過失を押し付けるな。

とはいっても、「(右側通行に)問題はない・法を適用すべきでない」なんて平気で言う輩ですから、もうひと押しほしいところですね。
どう異議を申し立てれば、くだらない言い逃れをされないかというと、文例の通りです。

さて、たとえあなたが「過失」を正確に知らなくても、相手方の言う「回避できなかった過失」について、以下の疑問が湧いてくるのではないでしょうか?

仮に「回避できなかった過失」があるならば、下記のように言えるはずです。

  1. 安全運転注意義務・(相手方の言う)回避義務は、双方にある。
  2. 「回避できなかった過失」があるなら、当然双方にある。
    右方車の過失が0と言っている訳ではない。
  3. 双方の過失は、相殺される。
    相殺しても0にはならず、むしろ左方車の過失が残る。理由は後述

さらに突っ込んでいく前に、重要な情報を一つ。

「法令違反がない = 過失がない」ではないということ。
これについては、まだ詳しく掘り下げる必要はないでしょうから、さらっと。

● 上記の理由は、道路交通法は「抽象的な危険」を「どのように防止するか」という観点から定められているため、信号無視等の具体的な違反に限らず、客観的にみて注意が十分でない運行をした場合等にも「過失はある」と考えられるためです。

ちなみに、日本車は世界最高水準の安全性があります。
衝撃を感知してエアバッグも飛び出して運転者や同乗者を守ってくれます。

自転車はというと、通常はエアバッグベストなど着用していない生身の人間です。衝突して転倒する事故がよくあります。
下手をしたら走行中の乗用車等に巻き込まれたりしますから、クルマ同士の事故と変わりないくらいか、それよりも危険性が高いと言えるかもしれません。

より注意を要すべき者は一体誰であったのか、それを明確にしていくことが大切です。

それでは、左方車・右方車双方の安全運転注意義務・回避措置義務の過失を相殺しても、「なお左方車に過失がある」理由を以下で見ていくこととしましょう。

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4:当事者双方の義務の重さ

さて、安全運転注意義務と回避措置義務は双方にあると言いました。
ここでは、「無法者と法令遵守者の義務がまったく同じなのか」ということが問題になります。

結論はというと、「そんな訳あるか!」となります。

もう少しきちんと言うと、
「違法行為を継続することで衝突の危険性を高めている者は、法令遵守者に比べ、結果発生を回避するために必要な措置を取るべき相応の義務が発生していると考えるのが相当である」
となります。

簡単に言えば、下記のようになる訳です。

  • 右方車
    交差点に至る前の段階で、違法行為がない。
    そのため、交差点において、通常の注意を払えばよい。
  • 左方車
    交差点に至る前の段階で、衝突の危険性を高める違法状態にある。
    そのため、交差点において、通常の注意義務に加えて違法行為を直ちにやめるべき義務が発生していた。

そうであるのに、左方車は違法行為を継続したまま交差点に進入した訳ですから、「双方の安全運転注意義務・回避措置義務が同等の重さのはずがないでしょう」と言うことになる訳です。

左方車の安全運転注意義務・回避措置義務の方がより重いとなると、その過失を相殺しても、なお左方車に過失が残ることになるという訳です。

上記の説明には、明確な根拠となる最高裁判例が存在します。
これを用いて異議申立を行うと、サンプル文例の通りになります。

当事者の義務の重さを考える際には、先行行為に基づく義務の存在を考えるようにしましょう。
それでは、これまでの情報から「過失の分かれ目」を明確にしつつ、事故発生状況に基づいて資料を用意し、異議申立書を作成してみましょう。

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出会い頭の事故:一方が優先道路の歩道を走行

交差点での自転車同士の出会い頭の事故において相手方が左方車として優先道路側の歩道を走行をしていた場合、あなたが何ら法令に違反する行為をしていなくとも、相手方保険会社・弁護士から過失を押し付けられることがありますので注意が必要です。

実際に下記のような実例があります。

  1. 信号の無い交差点で自転車同士が出会い頭で衝突。
  2. 相手方(左方車)は、四車線ある広い国道側の歩道を走行。
  3. 右方車Aは、センターラインのない狭い道の左側端を走行し、一時停止標識の所で一旦停止。
    塀で隠れていた左側安全確認のため自転車に跨ったままゆっくりと前に進み(歩行速度よりも遅い)、確認できる位置へ。
  4. そこへ相手方がAの前輪左側に衝突し、Aは転倒、頭に怪我を負った。
  5. 相手方(左方車)は、そのまま数メートル進んで停止。
  6. 通行人が119番通報し、相手方はただ見ていただけ。
交差点での自転車同士の出会い頭の衝突事故:一方が優先道路の歩道を走行

● 相手方保険会社の対応

別冊判例タイムズの「クルマ同士の交差点における直進車同士の出会い頭事故」【57】「一方に一時停止の規制がある場合(双方が同程度の速度)」の過失割合のコピーを添付し、過失割合「左方車(相手)対 右方車 = 20対80」と断定。

相手方保険会社:「別冊判例タイムズでそういう基準があるんですから、どの専門家に言っても過失割合は変わりませんよ。」
と、損害額の二割賠償を提示して譲歩しない姿勢を明示。

● 右方車Aの対応

市役所・弁護士等・日弁連交通事故相談センターの無料相談、有料の弁護士相談等を利用し、相手方保険会社からの資料を提示して過失割合を確認するも、弁護士から下記のように言われる。
「その事故態様なら、それが妥当なんじゃないですか。」
「どうしてもって言うなら、裁判をやって裁判所に認めてもらわないとダメなんですよ。」
「一時停止したって証拠があるの? それが証明できなきゃ難しいよ。」

その後、Aが得た情報「自転車の歩道走行時の歩道中央から車道寄り徐行」という相手方の義務を指摘した際の保険会社の対応は、以下の通り。

右方車側:「御社からの過失割合について異議があります。」
保険会社:「どういった内容でしょうか?」
右方車側:「送付いただいた資料を拝見しましたが、判例タイムズ【57】の場合とは、状況が異なると考えます。」
保険会社:「なぜですか? 自転車同士、軽車両同士の事故なんですから、クルマ同士の事故の過失割合を準用するのが一般的なんですよ。本件の事故態様は、まさにこの判例の通りだと思いますが。」
右方車側:「左方車側が歩道を走行していた点についてはどのようにお考えなのですか?」
保険会社:「自転車通行可の標識もありますし、問題はないと考えています。」
右方車側:「その場合、自転車は車道寄り徐行が原則であることはご存知ですよね。」
保険会社:「ええ、知っています。確かに左方車側に法令違反があったと言えるでしょうが、本件においてそれは特に結果に大きな影響はなかったと考えています。」
右方車側:「法令違反が大きな問題ではないと仰るんですか?」
保険会社:「それについては私どもは問題であるとは考えておりません。事故が起こっている以上、動いている者同士、あなたにも不注意があることは間違いありませんよ。そもそもあなたが本当に一時停止をしていたんであれば、衝突を回避できたんじゃありませんか?左方車側はあなたが突然飛び出したから回避できなかったと言っています。」

・・・以下略

以上のように、全くお話になりません。
根拠をもって反論できなくなると、「当事者がそう言っているから。」などと力技でくる保険会社や弁護士が現実におりますので注意が必要です。

さて、ここであなたに必要なのは「情報とその活かし方」です。
「歩道中央から車道寄り徐行」というのは必要な情報の一つですが、十分ではありません。
また、単に指摘しただけでは、上記のように保険会社の担当者や弁護士にあしらわれてしまいます。

なお、保険会社から上記会話のように「飛び出した」と言われた場合、右方車側はそれを否定するだけで十分です。
右方車側:「自分はきちんと一時停止していましたよ。飛び出したというのなら、ぜひそれを明確な根拠等をもって立証してください。」

このように言えるのは、左方車側が「右方車側の過失・故意等による法令違反等」を主張する場合、それによって右方車側に法令違反等による罰則が科される結果が生じる可能性がある以上「疑わしきは被告人の利益に」の考え方が当てはまるからです。
つまり、左方車側が事故発生状況等から明白でない右方車側の法令違反を問題にするなら、左方車側が合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の根拠を示してそれを主張・立証する必要があるということになるのです。

自転車の一時停止義務違反の罰則は「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」であり、過失犯の場合は「10万円以下の罰金」の立派な刑法犯罪になります。

● 結果

「相手方対A = 70対30」に変更。長期化を嫌ったAがそれを承諾して示談成立(2005年)。

その他、同様の事故態様で「左方車対右方車(加害者=依頼者) = 90対10」(2008年)・「左方車対右方車(被害者=依頼者) = 100対0」(2009年)で示談が成立した実例があります。

一方が歩道走行の場合の過失割合算定については、被害者・加害者を問わず、ある明確な条件に当てはまるか否かで基本過失割合が異なります。
上記実例のように、ある条件を明確にすることで裁判上の和解を勝ち取られた方もおりますので、お困りの方は独りで悩まずにご相談ください。

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出会い頭の事故:過失を押し付けられる事例

交差点での自転車同士の出会い頭の衝突事故:被害者幼児の親に過失を押し付けられる事例

事故発生日時:平成26年○月○日、午前11時頃
事故発生現場:東京都某所、信号のない交差点

加害者:30代男性X
損害:自転車後部凹損

被害者:5歳女の子Y
損害:転倒による右膝挫傷の全治5日間

事故発生状況:交差点出会い頭の衝突で、30代男性Xが道路を直進中、道路右側を走行してきた5歳女の子Yが交差点に一時停止することなく進入したため、Xがブレーキを掛けて停車したところに衝突し、転倒して傷害を負った事例。

さて、本事例における加害者(30代男性X)と被害者(5歳女の子Y)の過失割合は、何対何が妥当なのでしょうか?

被害者側保険会社が提示した過失割合は、判例タイムズのクルマ同士の交差点の出会い頭の事故【68】:同幅員の交差点「右折車が左方車である場合」を用いて「加害者:被害者=40:60」でした。
しかし、この事故態様で判例タイムズのクルマ同士の交差点の出会い頭の事故の基準を用いるなら、【73】「直進車:右折車=15:85」で考えるべきでしょう。
その上で本件における三つのポイントを指摘・主張すれば、他の過失要素がない限りXの過失はほぼ確実に0になります。

一つはもちろん右側通行ですが、これにももちろん突っ込み方があります。
あなた:「右側通行は逆走だ。法律違反だ。過失があるはずだ。」
などの主張では、事故発生状況を全く活かしきれていませんので注意が必要です。

なお、右側通行を指摘するだけでは、さすがに「直進車:右折車=0:100」には届かないでしょうから、他の二つも重要です。

● 本実例の結果

保険会社が提示していた過失割合の変更の経過は下記の通り。
当初:「加害者:被害者=40:60」

異議申立後:「加害者:被害者=20:80」

調停においてXは異議申立書をそのまま主張:「加害者X:被害者=0:100」

ちなみに保険会社・被害者である5歳女の子の親の言い分は下記の通りです。

  1. 保険会社:「自転車左側通行の道路交通法改正については、未だ一般に浸透していないから、右側通行を責めるのは無意味だ。」
  2. 保険会社:「5歳の女の子に責任能力はない。まだルールが分からない子供なんだから、あなたがもっと気を付けてれば避けられた事故だったでしょ。あなたには大人としての責任と過失があるんですよ。事故を防げなかったんだから。」
  3. 保険会社:「本来、左方車の方が優先なんですよ。」
  4. 女の子の親:「子供なんだからルールを知らない。大人の方が気を付けるのが当然。幼児や高齢者は交通弱者で過失が減算されるんだし。」

本件事故態様・状況から、これらの主張だけではほぼ意味がありませんので、左方車側は注意しましょう。

なお、上記の事故態様で、女の子側が過失100を免れる可能性のあるとしたら、それは【・・・・・】(要パスワード)でしょう。
単に「幼児という交通弱者である(5~10程度減算の可能性)」という理由ではありません。
これを知っているか否かで専門家の練度が分かります。あなたの専門家選びにお役立てください。

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自転車事故の過失修正

自転車事故・交通事故において過失割合・過失相殺が問題となっている場合には、相手方の過失要素を的確に指摘して明確な根拠をもって過失の修正を主張することができなければ大きな損失を被ります。
ですから、被害者・加害者を問わず、事件・事故発生状況を的確に把握・整理して過失としっかり向き合うことが大切です。

以下で自転車事故の過失要素とその修正に必要なパーツを見ていきましょう。

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著しい過失と重大な過失

著しい過失や重大な過失といった一般的過失修正要素は主張立証が大変なので、その違いをしっかりとみておきましょう。

  • 著しい過失
    通常想定されている程度を超えるような過失のことです。
  • 重大な過失
    最高裁判例によれば、
    「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するのを相当とする」
    とされています。
    これを簡単にいうと「ほんの少し注意をすれば簡単に結果が分かるのに、それすらしないこと」といったところでしょうか。

    ちなみに一般的な民事上の重大な過失の意味は「一般人に要求される注意義務を著しく欠いた場合のこと」です。

これらを踏まえて、加害者の過失がいずれであるか、またそれに近い場合と言えるかなどを考慮しながら異議・指摘・主張していくことになります。
その際はできるだけ分かり易いカタチにして、相手方のみならず第三者が見ても「なるほど」と思われるような工夫をすることが大切です。

加害者や相手方弁護士・保険会社は常に損害賠償額を低く抑えようと画策します。
重大な過失や著しい過失をないものとしたり、単純な過失だと平気で主張し、加害者の過失割合を低く抑えて算定した損害額を提示してくるので細心の注意が必要になります。

相手方に誤魔化されないようにするためには、自転車事故の過失要素や過失修正、相手方の過失の指摘・主張の方法等しっかりと理解しておく必要があります。

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自転車事故の過失要素とその修正値

自転車事故における過失要素と、その修正値に関して主なものを以下に列挙します。
なお、過失の修正が問題になるのは、それが事故発生原因や被害の拡大等について相当因果関係がある場合に限りますので注意が必要です。
損害発生に無関係の事由は当然のことながら考慮しません。

また、過失要素の修正値は事故発生状況等によって大きく変化します。
以下はあくまでも目安となるもので、これが絶対という訳ではありません。

過失修正値に幅があるのは、個別の事故において当事者の過失の程度に差が生じるからです。
過失の程度に関しては、過失修正要素の細分化検討によるランク分けを行うことで明確にできます(後述)。
これによって相手方・保険会社の提示した過失割合に対して的確な指摘・主張等が可能になりますので必要に応じてご相談ください。
下記の修正値において最大値になるような場合は、いくつかの過失要素が重複した場合や程度が著しい場合などとお考えください。

● 自転車事故の過失要素とその修正値

以上で全てではありませんが、これらについて考慮するようにしましょう。

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過失の程度の差を考えることの重要性
「傘差し運転・片手運転」

自転車同士の衝突事故で一方が傘差し運転をしていた場合、過失は何%加算されることになるでしょうか?

実は私自身が「過失10%加算しか認めない」と強硬に主張する加害者側保険会社の顧問弁護士と揉めたことがあります。

弁護士:「加害者の傘差しによる片手運転は安全運転注意義務違反の過失にあたり、これをもって加害者の片手運転の過失は評価され尽くしているから、せいぜい著しい過失にとどまるのが相当である。」
と横浜地裁での損害賠償請求事件において答弁書でもこの主張を展開しました。

本当に「片手運転の過失 = 傘差し運転の過失」で加害者の過失が評価され尽しているのでしょうか?

答えは「否」です。
評価され尽くしていません。
保険会社・弁護士の言い分は、傘差し運転を安全運転注意義務に違反する行為という一事として片付けており、過失の程度の差を全く考えていないものです。

傘差し運転の方が、通常の片手運転よりバランスが悪くなることは明白です。
運転者は雨に濡れない様にすることにも気を取られますし、傘で視界も制限される。
加えて雨風が強ければ、それはもう通常の片手運転とは比べものにならないくらい正常なハンドル操作が困難でしょう。
これらを運転者本人も十分に理解しているはずです。
そういった事実を無視して、単純に「片手運転の過失 = 傘差し運転の過失」としたのではいい加減過ぎます。

後述しますが、地形・場所・意識などの要素をしっかりと検討する必要があるのです。
これらを複合的に考えて過失の程度を明確にしなければ、相手方の本当の過失は判りません。
過失要素を細分化して検討することで、被害者がなすべき主張・立証も明確になってきますし、単なる過失・著しい過失・重大な過失などの判断にも大きな影響を与えるものになります。

● 保険会社の傘差し運転の過失の取扱い

保険会社では、傘差し運転を単純な過失と取り扱うことがほとんどです。
被害者が頑張って主張・立証しても、過失の程度の差を明確にできなければ、著しい過失と認められればいい方です。
何故かというと、クルマの場合のハンドルやブレーキ操作の不適切が著しい過失の具体的例として挙げられているからです。
つまり、傘差しによる片手運転は、ハンドルやブレーキ操作の不適切であり、著しい過失にとどまると言ってくる訳です。

これを理由として、これまで多くの保険会社が傘差し運転を単純な過失、よくて著しい過失としか判断しませんでした。
保険会社:「自転車だからクルマのハンドルやブレーキ操作の不適切ほど危険ではない。」
として、「傘差し運転 = 単純な過失」で済ますケースが現在も多いようです。

しかしこれは、はっきり言って間違いです。
その理由の一つは、単純な片手運転でもハンドル・ブレーキ操作の不適切に当たるからです。
片手運転だと、ハンドル・ブレーキを適切に操作することができないことは、子供にだって分かります。
相手方は「ハンドル・ブレーキを適切に操作することができないことを知りながら、片手運転をしてあえて危険な状態を作り出している」訳です。

前述したように、傘差し運転は、通常の片手運転よりも適切なハンドル・ブレーキ操作をより困難にすることは明白です。
同じ片手運転でも過失の程度に差が生じているのですから、この点をしっかりと主張・立証していくことになります。

損害賠償請求においては、ある行為が過失として認められた場合とそうでない場合では大きな差が生じます。
だからこそ、過失の指摘・主張ポイントを知ることが大切なのです。

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過失要素の細分化検討と必要性

自転車事故で揉めてしまって裁判所のご厄介になった場合には、被害者が加害者の不法行為責任について主張・立証しなければなりません。
その際には相手方の過失を完璧に立証する必要はありません。
裁判長に「なるほど、確かにそうかもしれないな。」といった心証を持ってもらえれば、相手方の過失を認めてもらえる可能性があります。

● 自由心証主義

民事訴訟法第247条:
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

稀に、被害者や加害者が相手方保険会社・弁護士から提示された過失割合に対して異議申立をした際に、
相手方保険会社・弁護士:「あなたがそれを事実だと主張するのなら、『合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証』か『合理的な疑いを超える証明』が必要ですよ。」
などと言ってくる者がいますが、民事訴訟の場合の必要な証明の程度は、刑事訴訟よりも緩やかな基準になっています。

● 昭和50年10月24日最高裁判決「必要な証明の程度」

訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。

最悪の場合を想定して早い段階から訴訟にも対応できるようにしておくべきです。
相手があまりに不誠実で平気で嘘を吐く輩の場合には、それが誰であろうと徹底抗戦する覚悟を持たなければなりません。
自身のみならず、大切な家族のためにもです。

さて、著しい過失や重過失といった一般的過失修正要素は通常予定されているものですから、それを考慮して過失相殺を行うのは当然のことです。
過失の加算要素を相手方や第三者に説明等する際は、しっかりとした根拠を示す方がより効果的です。
そのため、自転車事故の過失要素を事故発生状況・現場等から細分化して個別に検討・調整を繰り返し、さらにランク分けを行って適正な過失修正表等を作成することをおススメします。
相手方の過失が明確となる他、あなた自身の過失に気付くこともできるでしょう。
自身に過失がある場合には「認めるべきところは認め、誠意をもって謝る」ことが大切です。

さて、仮に裁判になった場合、「事故状況等から、当然認めてもらえるだろう。」と考えてしまうかもしれませんがこれが大きな落とし穴なのです。
裁判所が「判決の基礎」とすることができるのは当事者が主張した事実のみであり、当事者が主張しない事実は、たとえ証拠調べの結果、その事実の存否につき裁判所が確信を抱いたとしてもそれを判断基準とすることはできないのです。

それ故、過失修正要素を検討した上で資料を整理して適切な主張・立証をしていくことが大切なのです。
自転車事故において、裁判所がこれまでに自転車や歩行者の過失として「どういう行為を問題視しているのか」、「どのような注意義務違反が重視されているのか」等を予め調べ、それに沿った主張・立証を行うことが重要になります。

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過失修正の基本的な検討要素

過失修正をするための基本的な検討要素は、大体12項目ほどに絞られます。

  1. 規則要素
  2. 地形要素
  3. 場所要素
  4. 路面要素
  5. 時間要素
  6. 感覚・身体要素
  7. 行為要素
  8. 意識要素
  9. 年齢要素
  10. 自転車要素
  11. 特殊要素
  12. 天候要素

※ 上記過失要素の検討項目の中身とその具体例については過失修正 : 細分化検討に明記しています。

事故当事者の「感覚・身体要素」については、過失割合の変更に大変重要な要素であるのに、よく見落とされているものです。
場合によっては、行政機関等に対して情報公開請求を行うなどして情報収集をする必要がありますので、専門家に確認・相談するなどしましょう。

上記項目を検討し、項目別に修正根拠等を明確にしながら過失ポイントを計上していくと、同時に二・三要素に引っ掛かる行為の過失ポイントが高くなって過失の程度の差がポイント数というカタチで明確となる訳です。
こうすることで、相手方に対する説明が容易になります。
問題は、どういったものが過失ポイントとなるかについてですが、判例の過失認定資料や、裁判上・裁判外の和解などで得た経験による過失認定資料等を活用することが重要です。

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目に見えない過失要素の証拠確保

過失には、目に見えるものと見えないものがあります。
見えていても気付き難いものであったりすると、その過失を指摘・主張・立証するのは困難を極めます。
見えないものになると尚更ですから、事故が起きた時にすべき確認事項を知識としてもっておきましょう。

さて、相手の不注意といったものも目に見えませんが、事故発生状況からその度合いなど大体のことが分かるものです。
しかし、すぐに証拠を押さえないと闇の中に消えていく過失要素もあります。
例えば、「ブレーキの故障」は、事故の要因として大きな問題になります。
ブレーキが全く効かないのであれば「そのせいで衝突した」と言えるだけでなく「そんな危ない自転車に乗っている」こと自体も問題となるでしょう。

それでは、「ブレーキの効きが甘い」といった場合には、どうでしょうか?
これは、事故直後にその場で確認しなければ見ただけでは分からないことです。
程度によりますが、この場合も相手方が「それを知りながら自転車に乗る」ということが問題です。
そのような自転車に乗っていれば、衝突回避に支障が出ることは容易に理解できることだからです。
つまり、「危険であることを承知した上で自転車に乗り、結果として事故を起こした」ということになる訳です。

これが「単なる過失」と言えるのか、という問題です。
これを的確に指摘・主張することが必要になります。
「ブレーキの効きが甘い」ということはあくまでも一例に過ぎません。
他にも「見えない過失要素」や「見逃しやすい過失要素」は存在しています。

自転車事故・交通事故の過失を算定する際は、このような「見えない過失要素」に気付くことができるか否かが大変重要です。
以下の「視力・視野狭窄等の眼に関する問題」も確認しておきましょう。

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視力・視野狭窄などの眼に関する問題

クルマ・バイクの運転免許取得には十分な視力が必須です。
自転車に免許がないとはいえ、適正な視力が必要であることは言うまでもありません。

それではまず、クルマ等の免許取得要件である視力を見てみましょう。
なお、特に「裸眼」と書いていなければ、眼鏡やコンタクトによる矯正視力も含みます。
以下はいずれも「1または2」であることが必要です。

● 普通免許

  1. 片目でそれぞれ0.3以上、両目で0.7以上見えること
  2. 片目が0.3以下の場合は、他眼の視力が0.7以上で、視野が左右150°以上あること

● 原付、小型特殊

  1. 矯正、または裸眼視力が両眼で0.5以上あること
  2. 片目が見えない場合、他眼の視野が左右150°以上あること

道路交通には上記のような最低限必要な視力が求められています。
「自転車に乗るのに視力なんて関係ない」などとは到底言えることではありません。
自転車は軽車両ですから最低でも原付、小型特殊と同様の視力が必要と考えられます。
これを満たさなければ、自転車に乗ること自体が危険行為となりえます。

視力が低いことは本人自身が一番よく分かっていることです。
その場合に、低視力が一因であるような態様の衝突事故が発生した場合には当然責任が生じると考えられますから、

相手方:「あなたは、自転車運転に支障が出る(前方がよく見えていないなど)低視力でありながら、自転車に乗って公道を走行するという危険な行為をあえて行っていましたね。本件においてはそれが大きな要因の一つですから、あなた自らが招いた結果と言えるんじゃありませんか。」

と、突っ込まれても仕方ありません。
また、低視力が一因となっている場合で、その加害者が未成年者であれば、親の指導・監督義務も問うことができるでしょう。

なお、事故の当事者は、相手方にある程度の視力があっても、それだけで眼の問題を放置してはいけません。
他に気を付けるべきことがあります。
高齢者に多いのですが、眼の病気によって視野狭窄などが起こっている場合があるからです。

緑内障などは、40歳以上の約30人に1人、つまり約220万人の緑内障患者がいるとされています。
緑内障は、眼圧の上昇が原因であると考えられていましたが、実際には、正常眼圧であっても緑内障になるケースが多く、今では緑内障全体の70%以上を正常眼圧緑内障が占めるほどになっています。
正常眼圧緑内障などの症状は、ある程度進行するまで気付かないため、失明の大きな原因となっているほどです。

事故の当事者が目の異常を感じていながら放置していた場合には、明らかに過失があると言わざるを得ません。
視力・視野狭窄などは目に見えません。
だからこそ、事故発生後には必ず確認作業が必要になるのです。

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自転車の徐行速度

自転車通行可の歩道上を走行する自転車と歩行者の事故では、よく自転車の徐行義務違反が問題となりますので、問題解決の材料として自転車の徐行速度について知っておきましょう。

裁判所は、クルマの徐行速度について「ブレーキ装置を操作してから1m以内で停止する速度」として大体時速10km以下を目安としています。
しかし、これをそのまま自転車には当てはめるのは間違いです。
自転車の徐行速度についてはいろいろ意見が分かれています。
いくつか例を挙げると、

  • 歩行者の速度と同様に時速4km程度
  • 歩行者の速度から考えて時速7km程度

だとかがあります。

この点、国土交通省のサイト上の参考資料の中に「時速6~8km程度」という記述がありますからこれがもっとも信用できる情報でしょう。
そうであるならば、次の点が問題になるかと思います。
時速6~8km程度の速度で走る自転車がブレーキ装置を操作したら、一体何m以内で停止できるのか?

もちろん、舗装された平坦な道路や坂道、砂利道などの道路状況によって変わってきますが、そこはやはり一般的に考えるべきでしょう。
という訳で、市販されている自転車速度計を利用し、道場の教え子達の協力を得て実験してみました。
もちろん、自転車運転者が「前後輪両方のブレーキをしっかりと掛ける」のが前提条件です。 その結果としては、概ね「ブレーキ装置を操作してからの停止するまでの距離0.3~0.5m以内」といったところでした。
もっとも、これは簡単な実験結果ですので参考までのものです。

実際は、過失要素の細分化検討による場所要素を加えて考えるなど、自転車事故解析等が必要となる場合がありますので注意が必要です。

自転車の徐行義務違反は、徐行すべき場所でそれをしていなかった場合に問題となります。
どういったものが違反とされ、過失を問われるのか?
これは、自転車の徐行義務が課されている場所を考えれば簡単に分かることでしょう。
自転車の徐行速度は「場所」にもよりますが、クルマの1m以内よりも厳しいものであることを知っておきましょう。

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高速度・スピードの出し過ぎ

自転車事故において相手方の速度を立証することは容易ではありません。
自転車事故の解析を徹底的にやる場合に特に重要となるポイントは7つありますが、これに関しては数学・物理等の知識も必要になります。
「クルマと自転車の事故」・「クルマと歩行者の事故」で衝突地点を推定する際に用いることが多いので、ここでは割愛します。

自転車事故の高速度・スピードの出し過ぎが問題の場合、とりあえず簡単にできる下記を確認しておきましょう。

  1. 事故直前にコンビニなどの防犯カメラに映っていないか
  2. ブレーキ痕が残っていないか
  3. 目撃者に証言してもらえないか

そういった証拠がある場合でなければ、相手方の「スピードの出し過ぎ・高速度走行」を主張・指摘して立証するのは困難を極めます。
しかし不可能ではありません。
むしろ、相手がスピードの出し過ぎ・高速度走行を認めないことが被害者にとってありがたい場合もあります。

自転車同士・自転車対歩行者の事故の相手方がスピードの出し過ぎ・高速度走行を認めない場合には、あなたがある確認の仕方(要パスワード)さえ知っていれば、逆に相手方から有利な情報を引き出すことができます。
交通事故、とりわけ自転車事故の専門家であればこの方法を知っているでしょうから、相談・依頼されている専門家等に教えてもらってください。
これだけであなたの負担が減ります。

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ヘッドホン・イヤホン・耳あて使用

自転車事故においてイヤホン・ヘッドホン等使用中であった相手方にそれによる過失を指摘した場合、下記のような主張をする者がいます。
ヘッドホン等使用者:「ヘッドホンをしていたけど音量を小さくして周りの音が聞こえるように気を付けてたし、実際に聞こえていたからヘッドホンの使用は過失にはならないよ。」

聞こえているのであれば、ヘッドホン等使用していても問題ないように思われます。
しかし、事故発生状況から事故原因に少なからず影響を与えている場合には、このような言い逃れはなかなかできませんのでヘッドホン等の使用者は注意が必要です。

例えば、事故態様が出会い頭で事故発生現場が高い塀などで全く相手方を見通すことができない場所であれば、聴覚の重要性が当然増すことになります。
ヘッドホン・イヤホン等によって耳を塞げば、それをしない場合に比べて周囲の音が聞こえ辛くなるのが通常です。
そして、判例・通説の過失認識の判断基準は「合理的平均人」ですから、
あなた:「ヘッドホン・イヤホン等をしていなければもっとよく聞こえていたはずでしょう。そうであったならば、いち早く私に気づいて回避措置が取ることができたんじゃないですか?」
と突っ込めるという訳です。

自転車同士の衝突事故でヘッドホン・イヤホン等の使用が問題となった損害賠償請求事件において、ある保険会社の弁護士が過失割合提示の際に以下のように主張しました。
弁護士:「自転車運転者がイヤホン等使用していても、周囲の音の聞こえ辛さに関しては密室といえるクルマの運転者とほとんど変わらない。クルマでは音の聞こえ辛さはさほど問題とされないのだから、自転車事故においてヘッドホン・イヤホン等使用の過失相殺を主張するのは行き過ぎたものである。」

この弁護士の主張は、逆にこちらに有利に働くことになりました。
なぜなら、クルマと自転車の違いを無視したものだったからです。
そんな主張は【・・・・・】と言うだけで簡単に退けることができます。

● イヤホン・ヘッドホン使用がほぼ確実に過失として加算される場合

見通しの悪い道路では、警音器を鳴らして相手方に注意を促す標識のある場所があります。
このような場所で、相手方がイヤホン・ヘッドホン使用していて衝突した場合に問題となります。

警音器吹鳴義務の標識は、山間部に多いのですが、ロードレーサーなどでサイクリング中などに問題とされる場合があります。
また、たとえ標識がなくても、安全運転注意義務を考えた場合に鳴らすべきであったと裁判所に判断される場合もあります。
条例によってイヤホン・ヘッドホン使用が禁止されている地域もありますから、その場合には、当然に法令違反としての安全運転注意義務違反が問われることになりますので注意が必要です。

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二人乗り

二人乗りが原因で事故が起きた場合の加害者の過失について、
あなた:「二人乗りは危ない行為だから、加害者に過失があります。」
と言うのでは、ちょっと弱い感じがします。
ですから、しっかりと指摘・主張の仕方も検討する必要があります。
以下で、簡単に二人乗りの過失について考えてみましょう。

二人乗りをすると積載重量を超えている場合も含めて走行が不安定になる。
ハンドル操作が困難な場合もある。

こんなことは、通常の理解力を有する者であれば容易に理解できる。

そうであるのに加害者は故意に二人乗りをして危険な状態を作り出した。

過失の判断基準は合理的平均人だ。

このような危険な状態で道路を走行すれば、適切な回避行為が行えずに衝突の危険性が高くなることは合理的平均人は容易に理解できる。

加害者はそういった危険を知りながら、あえてその危険な状態で走行し続けた挙句、ハンドル操作を誤って被害者に衝突して傷害を負わせた。

以上の理由から、加害者の過失は○○な過失として○○%の過失相殺がなされるのが相当である。

以上のように「判例から、過失は合理的平均人を基準として判断すべきであるから、~となる。」のようなカタチで相手方の過失を指摘するようにするとよいでしょう。
なお、上記はあくまでも簡単なものですから、実際の事故発生状況によってその取扱い等しっかりと確認するようご注意ください。

※ 上記以外の「自転車の二人乗り」における危険性の指摘方法「二人乗りによる危険性証明の手引き

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サイズ不一致・体格不適合

自転車事故の過失の中に、サドルが高くて地に足が届かない場合などサイズ不一致・体格不適合の自転車運転による(裁判所が過失判断理由としてよく挙げる)不安定走行があります。
サドルが高い自転車で代表的なものといえばロードレーサー等でしょう。
街でもよく見かけますが、サドルが高く地に両足が届かないであろう者がほとんどです。

もちろん、それに乗っていること自体にケチをつけているのではありません。
「サドルが高い = 過失がある」と言っているのではなく、その状態で事故に遭うと「原因と結果に因果関係があればマイナス要因とされてしまう場合がある」と言っているのです。
なぜなら、サドルが高く地に足が届かない自転車に乗っていて事故にあった者の不安定さを問題視して過失を認定している判例があるからです。

もちろん、損害発生・拡大という結果とサイズ不一致・体格不適合との間の因果関係の有無が問題となります。
因果関係がなければ特に問題にはなりませんが、ある場合にはその状態で事故を起こしてしまうとなかなか言い逃れができませんので注意が必要です。

ところで、サイズ不一致・体格不適合の自転車運転を過失と判断する理由として、裁判所が多く挙げているのが、
裁判所:「走行の不安定性、つまり、安定走行だったのであれば事故の発生やその結果・損害の拡大などを回避できた可能性が高いといえる。」
というものです。

そんなの言いがかりだ!」という方もいるでしょう。
実際、「確かにそうですね。」と言えるような裁判所の過失判断があります。

● 平成19年3月5日東京地裁判決

赤信号により双方が一度停止し、青信号になってから被害者男性(タクシー運転手)が横断して加害者の横をすれ違おうとしたところ、加害者男性がよろけたためにX地点で接触し、被害者が信号機の鉄柱に顔をぶつけたという「交差点付近の歩道上での自転車同士のすれ違い様の接触事故」の事例で、発生状況を簡単な図にすると下記のようになります。
なお、双方とも他に特に問題となる過失はありませんでした。

交差点付近の歩道上での自転車同士のすれ違い様の衝突事故

この事故は、停車していた加害者が急にバランスを崩してよろけなかったならば起きませんでした。
この事故発生状況において裁判所が過失割合をどう判断したかというと、被害者:加害者=40:60です。
「・・・??? これは一体どういうことなのか?」
と思われたでしょう。
裁判所の過失判断の理由は下記の流れでした。

  1. 加害者がよろけなかったら、被害者は怪我をしなかった
  2. 加害者に責任あり
  3. でも、本来自転車は車道通行だ
  4. 接触事故の起きた歩道の状況(加害者が停車中・信号の鉄柱)から考えると、被害者が通る幅が狭かった
  5. 被害者は加害者とギリギリですれ違うことは容易に認識できた
  6. 被害者が両足が地につかない高さのサドルの自転車に乗っていたという不安定性も考えてみた
  7. 損害は公平に分担しないとね
  8. そうだ、4割減額しよう

「・・・ええ~っ!? サドルの高さはあまり関係ないんじゃないですか?」
と思われた方がいるでしょうが、その通り。この発生状況だと無関係といえますが、上記が裁判所の判断です。

このように、サドルが高くて地に足が届かない場合などの自転車運転者の身体とのサイズ不一致・体格不適合による自転車運転の不安定性は被害者にとっても大きな問題となりますので注意が必要です。

さて、自転車乗りの方から下記のご意見が寄せられます。
「サドルが高くて地に足が届かない場合でも、ある一定の速度で走行していれば不安定走行にはならない。むしろ速度を抑えることが危ないんだ。」
確かにその通りです。
しかしそれは、道路交通においてよくある条件・状況下では絶対に言ってはいけないことです。
これを言うと、逆に過失が大きくなる場合がある(要パスワード)ので注意が必要です。

サイズ不一致・体格不適合の自転車運転による過失は、ある状況・状態(要パスワード)において問題となります(因果関係は必要)。
これを分かっていないと言いがかりになってしまいますので、その点をしっかりと説明できる専門家に相談するように気を付けてください。

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