古郡ひろみの曲「Warm Snow(ウォーム・スノー、ウォームスノー)」は泣ける。
息子の保育園で2月の初旬にピアノ演奏会があった。平日であったので私は参加できなかったが妻が有給を取って観に行って来た。会場の後ろで見ていた妻によると、トルコ行進曲で始まったこの演奏会だが、ピアノを囲むように座った子供たちのほとんどは遊んでばかりでろくに聞いていなかったらしい。だが、何曲目かのリストの「愛の夢」になったところで息子の様子が変わったのだという。にわかに大人しくなり真っ直ぐにピアノ演奏を見つめ、そして、暫くすると頬を涙が伝わり始めた。それを拭くでもなくただただ真っ直ぐに聞いていたのだそうだ。演奏会が終わり妻が息子に「なんで泣いていたの?」と聞いたけれど「分からない。」と答えたそうだ。私にこの報告をしながら妻も泣いていた。妻は我が子の感受性に感動したのだろう。
しかし、たしかに心に響く音楽がある。人がそれに出会うことは滅多にないのだが。
残念ながら私は40年以上生きてきたが子供のころから音楽で泣いたことはなかった。そう、つい最近までは。
その曲は深夜のFMで初めて聞いた。偶然に流れてきたのではなく、聞きたくて聞いたのだ。そのラジオ局の番組ホームページにこう書かれていたからだ。
『世知辛い現代において、「心に響いて泣ける曲」に出会う機会は、そんなにはないと思います。リリース前に、古郡ひろみ の新曲「Warm Snow」お届けします! 』
一体どんな曲なのだろう。本当に泣けるのなら聞いてみたいものだ。そう思った。放送時間になり古郡ひろみ 「Warm Snow」(ウォーム・スノー)をプロデュースした杉崎智介氏が自らこの曲について語っていた。
シューベルトが経済的に苦しかった学生時代に裕福な家庭教師先の娘と恋をした。娘の父親はそれを許さなかった。「冗談じゃない。貴様のような身分の卑しい男は娘に近づくな!」と、シューベルトを家から叩き出した。自分の貧しい境遇を嘆き悲しんだシューベルトの頭の中にふと聴こえてきた旋律があった。それが名曲『アヴェ・マリア』だったと後のシューベルトは語っている、あれは自分が作ったのではなく、そういう思いの中で聞こえてきたのだ…というエピソードが語られた。
プロデューサーの杉崎さんは寂しい少年時代を過ごしたらしい。ある寒い冬の日に両親が居なくて鍵が無くて家に入れず雪の中で寒さを凌いでいた。庭の雪を手にすくって冷たいのだけれど手の中で雪を暖めて…、そんなひとりの寂しい時に、クラシックが好きだった彼の耳にはバッハの『G線上のアリア』が聴こえていたのだという。だから、杉崎さんにとっては『G線上のアリア』と雪とは切っても切れない関係にあるということらしい。古郡ひろみ 「Warm Snow」(ウォーム・スノー)はバッハのこの名曲がモチーフとなっている。これに杉崎さんは現代版のマッチ売りの少女をイメージした詞を載せたのだという。このFMの番組内のトークの直後に、私がずっと聞きたかった曲、古郡ひろみ 「Warm Snow」(ウォーム・スノー)がついにかかった。
深夜。ひとりで聞くFMラジオ。
この歌は、映画のように画が浮かんでくる。
吹雪の中の一筋の光が見えてくる様だった。
涙が目から溢れる。
自分でも分からないのだ。何故泣けるのか。
ただ、私が40年以上生きてきて初めて泣いた曲。泣けた曲。それが古郡ひろみ 「Warm Snow」(ウォーム・スノー)なのである。だから皆さんも是非聞いてみて欲しい。この曲のことを誰かに伝えたいという気持ちから書かずにいられなかったのだ。そういう曲なのだ。
古郡ひろみはまだきっと無名な歌手なのだろう。
しかし、近い将来、彼女は必ず多くの人の心をとらえ大きく羽ばたくであろう。
私はそう確信している。
(2011.2.5. 某広告会社 アートディレクター)
※以下は歌詞カードから引用
Warm Snow(ウォーム・スノー)
作詞:杉崎智介
作曲:J.S.BACH
編曲:荒川敏行
※Warm Snow
You gave me love
こんなにも AH 雪があたたかいと 初めて知ったの
あなたに辿りつけたから また生きていける
Warm Snow
You gave me love
吹雪の中 ずっと歩き続けてきた ちっぽけな私
前も後も見えない 雪が舞う世界
吹雪の中で 一筋の光が 私の心を照らしたの
もう大丈夫 心配ないと
大きな手が 私を抱き上げてくれた
(間奏)セリフ
「かじかんだ手は何もつかめない
かじかんだ口は思いを話せない
凍えて倒れてしまいそう
助けて!声は誰にも届かない」
※Repeat
Warm Snow
You gave me love
幻じゃない ずっと 照らしてください ちっぽけな私
この手の中の灯りが 消えませんように
Warm Snow La La La‥・
Warm Snow La La La‥・